内容説明
一九六八年、日本人青年医師に、ルソーの魂が降臨した。彼は『エミール』の理想を実現すべく、理想の子供を育てることを決意し、孤児院を創設する。集められた子供たちは、“世界の救い主”を作り出すための、実験体であった…。天使が舞い、混沌が支配し、血と精液にまみれた溟い幻想が憩う、濃密な作品世界。全く新しい才能の誕生! 第8回日本SF新人賞受賞作品。
人々は、今あるこの世界が、根底から作り変えられることを望んでいるんだ。いつの時代もそうだった。しかし、それは容易なことではない。だから、必要とされるのは、現状との闘いから変化が勝ち取られることではなく、現状を作り出した源にまで遡って作り変えられることだ。地下の王国が、父たちの歴史を飲み込んでしまう、そんな矛盾した革命だ。気づかぬうちに起源を置き換えてしまう。闘い自体が無力化されることを望んでいるのだ。それができるのは、ただ一人の子供だけだ。その子は子にして親なんだ。天使が巨人を産み、巨人が世界を産んだように。子孫にして父祖、結果にして原因、その両者を結ぶものだ。その子は、やがて《世界の救い主》になるだろう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
32
「ドン・キホーテの消息」が面白かったので、日本SF新人賞をとった本作を読んでみた。ジャン・ジャック・ルソーもジャック・デリダもよく知らず、ましてやその理論など知るよしもなく、Yahooで検索しつつの読書となった。そんな訳で、理解し得たとは言いがたいが、少年と少女、それを導いたであろう手紙の筆者の、意識下にあるイメージの飛躍に浸りきってしまった。2017/04/16
空箱零士
9
★★★ あくまで「ジャン=ジャック」の自意識なんだよね。読んでないので臆断でしかないけども『ルソー、ジャン・ジャックを裁く』の裁かれる側。要するに僕はこれを「物語がもたらす暴力性」の話と見たけども、ポイントは「ジャン=ジャック」という「実在の人物(のテクスト)」を「物語」と見立てたことにあると思うのです(そも「ジャン=ジャック」が憑依した医者は「物語のなかに自由に出入りできる」人物)。ある理念が現実世界に及んだ時に現出する「暴力」。スペキュレイティブ・フィクションという「思弁」によって展開される「暴力」。2014/10/04
訃報
5
設定・世界観は厨二アンテナにビンビンくるのだが、文体がなんかこう、悪い意味でいかにもサブカル畑ですって感じで、いくら内容が激しかろうとこれではどうにも。ただ文字として滑っていく感じ。『ハムレット・シンドローム』は印象的なフレーズが多かったのにな。まあそれだけ成長したってことなんだろうけど。構成に関しては正直俺の頭では(知識・思考能力双方で)ついていけない。お手上げ。2013/10/18
プロムナード
4
縦横に幻想的イメージを組み上げてあるつくりが心地よかったですが、直感より論理を足がかりに編集された感じが、幻想文学というより学術論文っぽいなと。突飛な跳躍をしているように見えながら実は小さなところをぐるぐるまわっているので、山尾悠子のような壮大な幻想文学とはちょっと読み心地が違う気がします。その中にイーガンの「貸金庫」みたいなSF的発想も混じっているところが面白いんですが。船の床の奥底へ潜り込む場面など、印象的なヴィジョンがあるのも素敵。2016/11/04
マリオネット・ブックマーク
3
伊藤計劃、円城塔と同じ年にデビューしたこの作家を、知る人は少ない。僕が「樺山三英」という作家と出会ったのは『ハムレット・シンドローム』という作品で、それも作品が気になったのではなく竹岡美穂さんの絵が好きだったからだ。 あらゆる作品をテクストとして引用しメタフィクションと化すこの作品に対して、私は語るべき言葉を持たない。人称の問題(「僕」は「私」であり「俺」である)など様々なものを孕んだこの物語で、俺の印象に強く残っているのは「世界全体を包む子宮」の幻想だ。120ページからの一連のシーンを、僕は忘れない。2013/08/13
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