内容説明
フランスのリヨンに留学した日本の一青年を主人公に、戦争で片腕を失ったドイツの神学生、拷問・虐殺をひそかに行った対独抵抗組織の内なる暗黒を描くことにより、人間と人間の疎外、異人種ゆえのコンプレックス、裁く者と裁かれる者の憎しみという問題を追究。遠藤文学の原点ともいうべき処女長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
501
17
初期の作品。戦後、フランスに住む留学生が社会に色濃く染み付く有色人種対する人種差別に悩まされ、日々を悶々と過ごす。その中、住む街を訪れた人物の願いが、図らずも第二次世界大戦時、美談として祭り上げられているフランスのナチスに対するレジスタンスの裏側に隠された事件へ行き着く。留学生日本人と行動をともにする人々も自ら背負った罪の思いをこの事件に投影する。終始、重い空気が覆っているがどこか救いの希望も見え隠れし、後々の作品に共通する著者の人間への視点を感じる。2022/06/29
P
0
人間の闇と葛藤の描き方が絶妙。5