内容説明
誰もが知っている妖怪。この不思議な存在は、どのように人々の心に育まれたのだろうか。伝統文化、アニミズムから、特撮、オカルト、UMAに至るまで、さまざまな例を引きながら妖怪の真実に迫る!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
51
妖怪の意味と霊の存在から言葉に込められた「言霊」を解説しているのが興味深いところです。様々な例を引き出しているのも面白いですね。京極さんの妖怪に関する蘊蓄をあれこれ知ることができました。2022/08/29
ミエル
33
いわゆる怪異についての蘊蓄と考察、これだけ細分化して書き分ける知識量がやはりすごい。幽霊、妖怪、化け物、心霊、心理。一般的にこれらのネタを解説しようとすると、科学的見地から否定的な言葉ばかりが出てくる。本作は違った。そんな月並みなものじゃなく、思想と文献でのみ語るところが斬新、そこが京極夏彦らしさなのだな、としみじみ感じる。科学と対地すると、途端にファンタジーと親和性が上がって夢がある。まさにオカルト。オカルトには夢が必要な気もするし、現実とリンクして欲しい気もするし、個人的には気になって仕方がない笑2022/09/28
イトノコ
30
京極夏彦氏が化け物、お化け、幽霊などを言葉の定義から徹底考察。/これぞ至福。京極堂の蘊蓄を360ページにわたって聞いているような酩酊感。しかも読み終わっても何かが身につくわけでも賢くなるわけでもない、DIOもびっくりの無駄無駄ぐあい!しかし普段なんとなく使っている言葉の定義や成り立ちを改めて考察するのは、物事を考える上で大切な姿勢だろうな。「霊」とは「普通ではありえない事象/体験」を説明するために作られた概念であり、「普通ではありえない事象/体験」が「霊」の実在を証明するものとはなり得ない、とは達見。2021/06/03
ゲオルギオ・ハーン
25
妖怪、化け物、幽霊、心霊などの定義について考察した一冊。著者の小説同様、回りくどい論法(褒め言葉)で丁寧に外堀を埋めながら考察するので無駄がないのに文量が多いが、苦にはならない。本書と話が少しズレるがスペイン語の『フェノーメノ』は時々『化け物』と訳されることがあるがこれは意味が噛み合っていないということになる。化け物=人以外のなにかに化ける、だがフェノーメノは化けるのではなく、超常的存在そのものでありなにかが化けたものではない。逆に化け物に相当する表現が他の言語だと何に当たるのかが気になった。2022/09/07
テツ
22
京極堂シリーズで中禅寺が語る長々しい蘊蓄が好きで仕方ない人間なら素直に入り込めるであろう、京極夏彦による幽霊や妖怪についての考察。著者も書かれているように、本当に生きる上では何の役にも立たない知識であるのだけれど、自分の興味のあることについて掘り下げて調べ思考することの楽しさは何物にも代え難い。生活の役に立つ、俗物的な知識やスキルだけで自分の中が埋め尽くされたら息が詰まってしまうもんな。無駄かどうかではなく、自分が楽しいかどうかということだけで浸れる楽しい世界って人間にとって大切なんだと思います。2020/11/11