内容説明
作家としての精神を育んだフランス留学時代の内的記録――1950年6月、第1回カトリック留学生として渡仏し、1953年2月、病によって帰国するまでの2年7ヵ月の、刺すような孤独と苦悩に満ちた日々。異文化の中で、内奥の〈原初的なもの〉と対峙して、〈人間の罪〉の世界を凝視し続けた、遠藤周作の青春。作家としての原点を示唆し、その精神を育んだフランス留学時代の日記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほたぴょん
1
1950年から52年、肺疾を抱えつつフランス(ルーアン、リヨン、パリ、ランド)に留学した遠藤周作の日記。刊行することを目的に書かれたものではないせいもあろうが、特に渡欧すぐの頃の日記などには気負いのようなものも見えて、若いなあと微笑ましく感じられる。遠藤といえばF・モーリアックの影響が大きいのが有名だが、ジッドやグレアム・グリーンへの言及も多い。ボーヴォワールやメルロ・ポンティについても取り組んでいるし、フォークナーなども読んでいる。小説の方法として探偵小説を取り入れなくては、という企図なども面白い。2025/03/01
hiratax
0
福武文庫版を読む。早稲田の虹書店の20円棚(正しくは21円)で購入。 若き遠藤青年のフランス留学記。途中、体調を崩し志半ばで帰国を余儀なくされる。行動が逐次記され、行きの船は横浜から神戸を経て、香港、マニラ、サイゴン、シンガポール、コロンボ(スリランカ)、ジプチを経てスエズ運河から地中海を横切り、マルセイユへ至る。船酔いと戦い到達した国で勉強していたはずのフランス語のヒアリングはまったくできない。ありがちな洗礼から、青年の苦悩の日々が始まる。2013/01/10