内容説明
悪左府・藤原頼長から女官に下された密命とは?
平安ピカレスク小説誕生!
平安時代の末、藤原の氏の長者・藤原頼長は冷徹な頭脳ゆえ「悪左府」というという異名で呼ばれていた。
己の権力争いの道具として頼長が目を付けたのは、下級貴族の娘だった。
琵琶の名手である娘は下された密命のため帝の傍に送り込まれる。
時代の変わり目に彼女が見たものとは。
謎とスリルに満ちた長篇宮廷小説。
解説・内藤麻里子
※この電子書籍は2017年6月9日に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolgang1957
34
図書館の新刊棚に置いてあったので思わず借入、新しいものに弱いなぁと自分に突っ込む😅読んでみると平安期が舞台なので人の名前の読み方や、貴族や武士の家系がとうとうしっかり把握できずに読み終える😓平清盛と源義朝くらいしか名前はピンときてないなぁ、まあエピローグに出た人は、教科書に良く出てた人でしたが主人公じゃないし……とにかく藤原氏の終焉に絡むサイドストーリーです。貴族たちの権謀術数は興味深かった、けどやっぱり名前が苦手です😝(2回言うた😑)2020/09/30
金吾
31
○頼長は有名ですがなかなか小説の題材になっていないので、権勢を保持している頃から没落、保元の乱まで一連が書かれていて面白かったです。また栄子、多子の視点の変化も良かったです。栄子は醜女となっていますが、今でいうと美人に当たる描写なので、映像化されることも考慮したのかなあと思いました。鴨長明は少しビックリしました。2021/12/01
Ayako
27
平安時代末期、貴族に代わり武士が力を付けつつあった時代を舞台に、琵琶の名手・栄子の数奇な運命が描かれる。藤原頼長に利用され、時の権力闘争に巻き込まれつつも、芯の通った栄子の生き方に共感した。女性の地位など無かったこの時代、制限がある中でも栄子、そして多子は凛とした人柄が伝わってきた。また平安時代ならではの優美な王朝文化の描き方も丁寧で、円熟した文化と迫り来る変革の足音を同時に感じる事が出来た。2020/09/22
TheWho
16
藤原北家の摂関政治が衰退し院政真っ只中の平安末期に摂関藤原氏の興隆を目指した麒麟児で悪左府と呼ばれた藤原頼長より近衛帝の寵を得る為に宮中に送り込まれた架空の琵琶の名手の女御「晴澄栄子」を主人公とした保元の乱の序章の物語。保元の乱を院政の継承争いだけでは無く摂関藤原氏内の攻防の視点に立ち、より明確に武家平氏政権の移行、いや後の鎌倉武家政権への移行を栄子の視点で哀愁深く語られる源平盛衰記の序章で平安衰退記とも云える秀作です。2022/02/22
若黎
10
面白かったなー 道長の時代も好きだけど、摂関家の崩壊にあたるこの時期も好きだ。とても頭が良いが柔軟性に欠ける頼長、その頼長を支えてるように見えて、土壇場で子供より摂関家を選ぶ忠実の非情さ。そして、あまり題材にならなそうな近衛帝が琵琶を通じて女性と心通じあうところがいいですねえ。 2025/06/28