講談社選書メチエ<br> 「人間以後」の哲学 人新世を生きる

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講談社選書メチエ
「人間以後」の哲学 人新世を生きる

  • 著者名:篠原雅武【著】
  • 価格 ¥1,925(本体¥1,750)
  • 講談社(2020/08発売)
  • ポイント 17pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784065207819

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内容説明

21世紀に入ってから、以前にもまして人類は、大地震、台風、集中豪雨などの自然災害に遭い、今また新しいウイルスとの共存という課題を目の前にしている。もちろん、日本も例外ではない。
ここに出現しようとしているのは、私たちが今まで意識することなく当たり前に存在することを前提にし、その中で生きていると思ってきた「世界」が根底から崩れ去ろうとしている状況ではないだろうか。その認識が示されているのが、2000年に提唱された地質時代の区分である「人新世」だろう。これは人類の著しい発展の末、地球規模の環境変化がもたらされる時代として定義される。そこでは、今まで当たり前だった世界は、まったく当たり前ではなくなる。
だが、そんな来たるべき時代にはどのような世界が出現するのか、そしてその世界の中で人間が「人間」であるための条件とは何か、そのとき私たちは何を拠り所にして生きていけばいいのか、といったことは、まだ問われ始めたばかりである。ドイツの哲学者マルクス・ガブリエル(1980年生)の名を知らしめた著作の表題になっている『なぜ世界は存在しないのか』という問いは、その一つの試みだと言うことができる。
本書は、ガブリエルのほか、近年日本語への翻訳が相次いでいる、カンタン・メイヤスー(1967年生)、ティモシー・モートン(1968年生)、グレアム・ハーマン(1968年生)といった1960年代生まれの哲学者たちを簡便に紹介しつつ、その思想を正面から検討し、日本の状況と照らし合わせる中で、これから先の世界と人間をめぐるさまざまな問いに答える方法を提示するものである。哲学・思想のみならず、建築や現代美術、演劇といった芸術の世界とも深くコミットしてきた著者が渾身の力を込めて書き上げた本書は、これまでの集大成であるとともに、「その先」に見える可能性を指し示すものにもなっている。
現代哲学の優れた概説書である本書が、同時に「予言の書」でもあることは、今後の時間の中で証明されることだろう。誠実に思索したいと思うすべての人に捧げる。

[本書の内容]
プロローグ
第1章 世界の終わり?
第2章 世界形成の原理──ガブリエルとメイヤスー
第3章 人間から解放された世界──ティモシー・モートン
第4章 「人間以後」の哲学──グレアム・ハーマン
第5章 人間の覚醒――柄谷行人
第6章 地下世界へ──フレッド・モーテン
第7章 新しい人間の条件──アーレントからチャクラバルティへ
エピローグ

目次

はじめに

プロローグ 2019.8.3
第1章 世界の終わり?
第2章 世界形成の原理──ガブリエルとメイヤスー
第3章 人間から解放された世界──ティモシー・モートン
第4章 「人間以後」の哲学──グレアム・ハーマン
第5章 人間の覚醒――柄谷行人
第6章 地下世界へ──フレッド・モーテン
第7章 新しい人間の条件──アーレントからチャクラバルティへ
エピローグ 2020.3.11


文献一覧
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

msykst

9
思弁的実在論やオブジェクト指向存在論や人新世みたいな昨今の思想的潮流の話の再確認として読んだ。この手の話の中では、例えば「人とモノとのフラットネス」みたいなアプローチが強調されるイメージがあったけど、本書では一貫して感覚や実存の問題にこだわって論じていたのが印象的だった。2023/03/04

chiro

2
「人間以後」が象徴するものとは一体何なのか?そして、それ以後を生きるとは?どういう事なのかを考えながら読んでいた。モートンの著作を読んだ後であったし、その著作の翻訳者がこのほんの著者であったので課題設定は同じ中でそれ以外の学者を含めて著者が考える「人間以後」を生きるという問いかけに対する論考は耳を傾けるに値するものであったが、こうした議論が人口に膾炙することはまだまだ難しい環境にあるのだろう。2023/05/06

そあ

2
90年代後半生まれの自分にとって、個が形成される時期に3.11や集中豪雨に対しインフラ/土木技術が敗北する姿をまざまざと見せつけられてきた、本章では磯崎新らが引用され頻繁に建築スケールでの議論がなされていたが、都市計画のトレンドである縮退やコンパクトシティ周りの議論と接続する余地もありそう 2021/10/03

Mealla0v0

2
世界は人間なしに存在する(SR、OOO)が、それでも人間はこの世界で生きている。それはどういうことかが問われている。廃墟や廃棄物のように、一度は人間化された事物が、人間世界から放擲され、うち捨てられたことが、従来の世界像の崩壊として捉えられており、議論としては非常におもしろい。だが、エピローグで語られている著者の問題意識(『全‐生活論』で問われたような生活者としての実存)に反して、本文の議論はどこか空を切っている印象は否めない。ミクロではなくマクロな視点から語られている感が、著者のこれまでと違う印象。2020/10/06

左手爆弾

2
個人的には苦手な書き方の本で、それ故正しく読み取れたのかはわからない。というのも、突然個人的体験が入ってくる、色々な登場人物の色々な話題に話が飛ぶ、にもかかわらず全体として話が進んでいるのかは定かではないと感じたからだ。もちろん、人間中心主義が終わりを告げつつあるというのは最近の動向のひとつであることは間違いない。が、それに対してどのような態度をとっているのかはよくわからない。2020/09/22

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