内容説明
二十三歳の越路玄一郎が入社したのは、個性派揃いの梁山泊のような出版社だった。部長の田村隆一に仕事を叩きこまれ、都筑道夫の後を受けて『EQMM』編集長を務め、そして作家に。一九五六年~六四年の疾風怒濤の編集者時代と戦後ミステリの草創期を活写する、ハードボイルド作家の自伝的長篇小説。
〈巻末エッセイ〉河合 靖/〈解説〉郷原 宏
■目次
地獄へようこそ/悪戦苦闘/汗みどろの日々/粋で貧乏で/色やら恋やら/走り出す人々/ミステリ戦国時代/さらば編集者/あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Inzaghico (Etsuko Oshita)
7
田村隆一は、別のところからも話を訊いたことがあるが、生島の分身である主人公の越路によれば「ずぼらで怠け者」だが、真面目な話になると照れて話を逸らすところは江戸っ子だ。韜晦癖があるのだ。小泉喜美子との結婚生活は、あまり幸せそうな感じが伝わってこなかった。小泉のほうが惚れていたということもあるのかもしれないし、越路が彼女の才能に嫉妬したというのもあるのだろう。彼女の『弁護側の証人』(傑作!)が称賛されたのも手放しで喜べないのを吐露しているのは正直というか、なんというか。2020/05/27
オールド・ボリシェビク
4
時は1950年代。早稲田を出てから23歳で早川書房に入った主人公は、出版部長の田村隆一や「エラリイ・クインズ・ミステリ・マガジン(EQMM)」編集長の都築道夫らの薫陶を受けつつ、編集者としての地歩を固めていく。著者以外はすべて実名で登場する自伝的長編小説だ。戦後ミステリ草創期を活写していて、興味深く読んだ。しかし、編集者をやりながら、作家になる意思を持つというのもすごい話で、無鉄砲であるか自信家なのか。今でこそ、海外文学を紹介して瀟洒なイメージの早川書房だが、当時の様子が何とも言えない。2025/01/17
トランザム7000
3
なんでもかんでも昭和と言う時代が良かったわけではない。今は土日には休みがあるし、残業代だって貰える。だけど、昭和が懐かしく思うのは、良くも悪しくも『いい加減』な時代であり、今のようなコンプライアンスガチガチで窮屈な社会に辟易しているからかもしれない。本作はそんな『いい加減』な時代を駆け抜けた1人の編集者の物語。あんな人やこんな人が実名で登場しており本好きにはたまらない。読後は必ず生島治郎さんの小説が読みたくなる(はず!)2022/09/23
やま
3
著者の自伝的小説であるが、推理小説とSF小説の出版で名高い早川書房創成期の推理小説史でもある。文章が簡潔明快。2020/08/22
近江
1
著者の早川勤務時代のエピソードを面白おかしく小説家した一冊。出版社内の仕事と給与事情やそこから派生してくるバイト制度の状況はなかなかにブラックではあるものの、エンタメ業界沼にどっぷりハマった人たちからすると非常に身につまされつつ面白い。この本から入ったので、作者の著作も読んでみたくなる次第2021/07/10
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