誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

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誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ

  • ISBN:9784750516288

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内容説明

必死で 情けなくて まぬけな 愛すべき「私たち」

ネット古書店でエゴサをしていたら、サイン入り自作が売りに出されていることに気づいた作家「イ・ギホ」。しかも他の作家の本より格安、酷評のコメン付きだった。悶々として眠れぬ作家は、出品者に直接会おうとはるばるでかけるのだが……。(「チェ・ミジンはどこへ」)

夫殺害の嫌疑をかけられながら逮捕されなかった女が、十数年後、時効を3か月後に控えて自首した。一体なぜなのか。(「ずっと前に、キム・スッキは」)

「あるべき正しい姿」と「現実の自分」のはざまで揺れながら生きる「ふつうの人々」を、ユーモアと限りない愛情とともに描き出す。――韓国文学の旗手による傑作短編集

【もくじ】
チェ・ミジンはどこへ
ナ・ジョンマン氏のちょっぴり下に曲がったブーム
クォン・スンチャンと善良な人々
私を嫌悪することになるパク・チャンスへ
ずっと前にキム・スッキは
誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ
ハン・ジョンヒと僕
あとがき
訳者解説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

星落秋風五丈原

48
表題作も主人公に対して随分と辛らつだ。カン・ミノは(恐らく)どこにでもいる韓国男性で特にイジワルなわけではない。かつて教会で教え導いていたユニがイスラム教に改宗したというので相談を受け、何年かぶりに会いに行く。しかしミノの一言ひとこと、“会いに来た”時のやり方がユニを傷つける。語り手がミノなので、勿論彼にはユニの気持ちは全く分からない。しかし読者にはユニの端々から零れる言葉で、何に傷ついたかわかる。そしてミノが原因に一生思い当たらない類の人物であることも。スパダリを韓流で供給する前に通貨危機は起きていた。2020/02/17

りつこ

44
全編通じて描かれているのは「恥、羞恥」とあとがきにあり、なるほど…と思ったのだが、根底には「正しくありたい」という道徳心があるように感じる。ダメなところや弱いところもあるけどそれが人間らしさだよね、と受け入れる姿勢はなくて、そのダメさを冷徹に見つめている。ユーモアもたっぷりで軽い筆致で描かれているけど、あはは…と笑えない。「恥」の意識は日本人にも馴染みのあるものだけに、チクチクと胸を刺す痛みを感じた。善良な人の行動に感じる苛立ち。邪悪さを警戒して逃げてしまう弱さ。苦いけれどとても面白かった。2020/04/13

あさうみ

42
読み始め2ページくらいで吹き出すユーモアと、思わず考え込む重さのバランスがいい。情けなく、良かれと思っていたことが仇になる…器用に上手く生きていける人間なんかいないよね。でも生きていこうよと背中を撫でられ、落ち込んだ気分がちょっと上向きになる。 2020/02/02

あじ

36
韓国文学を四十冊ほど読んできたが、これまでとだいぶ毛色の異なる作家だった。書くに値する思想と他者へのまなざしで成り立つ短篇群は、読者に思索の余地を十二分に与えている。うかうかしてられないぞ、日本の若手作家たちよ。この完成度(主張)を見くびってはならない。2020/03/05

M H

24
すごく良かった!!作者自身を思わせる語り手のユーモラスで気弱な姿の奥に「あるべき自分(でも無理)」、「こんなこと言ったら大人げない、恥ずかしい(でも言っちゃう、あぁ)」が貼りついている。冒頭に収録の自分の本が酷評&安値で売られている「チェ・ミジンはどこへ」からしてこの悶々とした感じが愛らしい。ほかの収録作も柔らかい語り口で「正しさ」を捨てられずに起こることを突き放しすぎず、でも直視せざるを得ないように描かれている。2020/11/29

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