内容説明
「ああしんど」「あかん」「わやや」……。大阪弁独特のこうした言い回しのなかには、大阪人のどんな真情がひそんでいるのか。千年もの間、磨き抜かれた社交技術の粋ともいえる京の言語文化と、三百年の伝統ある商都の知恵を併せ持つ大阪弁。その魅力と、大阪弁を育んだ精神風土を明らかにするエッセイ。〈解説〉長川千佳子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
71
大阪弁を題材にしたエッセイ。関西圏の人間やったら一日一度はよう聞く「あほ」や「ああしんど」、「けったいな」は出てくるん当たり前やけど、「チョネチョネ」や「こまんじゃこ」とか聞いた事無い言葉も多い。自分、関西圏に住んどる自覚はあるんやけど。40年近く前の本やから死語になっとる言葉もあるんやろけど、実際に使われとるかは生粋の大阪人に聞いてみたいところ。個人的には大阪弁のあのねっとりした語感生かしたのには「生き口を問う女」や「面影草紙」とか名作が多いように思う。大阪弁の魅力が融通無碍に語られたええ一冊やった。2021/10/13
shikashika555
54
著者の語る大阪弁論は滋養に満ちて面白く塩梅のいいところにスパイスも効いて、脳みその栄養になる。 大阪弁の粋とは何だろう。 「大阪弁のあいまいさ、多言的な語彙、四通八達のニュアンスなどは(中略)大阪は王城の地の畿内だ。一千年伝え伝えた社交技術の粋ともいうべき今日の言語文化を基盤として、そこへ、商業都市三百年の伝統が加わる」との説明がある。 そこへ「所詮は人」の達観と明るい諦観、動けばなんとかなるという世の中への信頼とでもいうべき逞しい人のよさ、「あり物」で最善を形作るセンスの良さがあるように感じる。2022/11/04
Shoji
36
田辺聖子さんによる「大阪弁に関する一考察」です。なかなか面白かったです。やっぱり大阪弁の響きはいいですね。関西の方こそ読んで納得の一冊ではなかろうか。2023/02/05
アオイトリ
28
おせいさんのユーモアたっぷりの大阪文化論。最高です。「一も二もない、三ぴんが 知りもせんこと、ごじゃごじゃと ろくでもないこと、七面鳥 はったろか、食うたろか、とんでいけエー」って今の子も言うのかしら(笑)大阪弁のあいまいさ、多元的な語彙、四通八達のニュアンスなどとても高度な文化だと知る。相手を傷つけない配慮とは耳が痛い。「いちずにうとうてしまわんと、おのが難儀を自分でおかしがり、こちらも往生した、と頭をかいて、ウダウダいうてると、またそのうち何なりと、道もひらけるのんかもしれまへんなあ」2022/09/07
クラムボン
24
50年前に書かれた大阪弁のエッセイ。田辺さんが小さい頃は、祖父が商売の実権を握り、その上にお家(え)はんの曾祖母が居り、父の弟妹5人、祖母、店員女中衆(おなごし)合わせて20数人の大家族だった。そんな大人たちの言葉を聞きながら育ったことが、後年、大阪ことばで書く作家田辺聖子としての養分になったのだろう。小学校の頃、先生は標準語で話し、大阪弁は野卑で下品な言葉として蔑まれていた。ただ大阪人は、そんな世間の風潮に関わらず、堂々と大阪弁を撒き散らしていた。現在は逆に方言が尊ばれる時代になったのだから面白い。2025/11/22
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