内容説明
『暁の脱走』『独立愚連隊』から『この世界の片隅に』まで――。
日本映画はいかに戦争と向き合ってきたか?
元特攻隊の脚本家、学徒兵だったプロデューサー、戦地から生還した映画監督が映画に込めた、自らの戦争への想いとは?
『この世界の片隅に』片渕須直監督との特別対談も収録。
日本の戦争映画を広く知るために最適の一冊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
76
読友さんのつぶやきで知り読んでみた。戦後作られた日本の戦争映画を丁寧に解説する。時代による変化や作り手の思いによる描き方の違い。映画会社の事情によっても変わってくる。悲惨な状況を描いたり、反戦をとなえたり、エンターテイメントの設定として描いたり、情話として涙をさそったり。あまり戦争映画は好きでない方だったが、取り上げられた映画は結構観ていた。片渕須直監督との対談の中でイデオロギーから解放してくれる戦争映画が日本にも出てきたというのが印象に残った。戦争映画を通して戦争と戦後と日本人を見つめた良書だった。2022/04/03
yamatoshiuruhashi
57
日本の戦争映画の作り手たちがどのような思い出どのような作り方をしてきたか、という映画史から日本人の心情の変遷も類推できる。本書の重要な部分はわずか3頁の「はじめに」にあると思う。即ち、「本書に書かれているのは『映画内の作品描写としての戦争』になります。その内容は結果として『史実』と異なる場合も多々あります。(中略)史実はそうだったのか」と思い込むことも「史実はそうではない!」とめくじらを立てることも、ご遠慮いただきたく思います。」冷静に作られた映画の時代背景とその送り手の考えを考えるための本である。2022/03/09
nnpusnsn1945
45
戦争映画についての概説書。(随分前に読んでいたのに感想を書き損ねた故に再読した。)50年代から80年代までの作品についてまとめてある。90年代や00、10年代の作品が多く割かれていないのがネック。2022/03/03
たか厨
20
筆者の映画に関するトークはラジオやネットを通して、何度か聞いたことがあるが、著作を読んだのは初めて。戦後、日本で作られた80本余りの戦争映画に言及した労作。本書は三部構成で、第一部は、時代と共に変わっていく戦争映画の内容の変遷を追い、第二部では戦後最も多い、8本の戦争映画を撮った監督・岡本喜八を取り上げ、第三部は筆者と『この世界の片隅に』の監督・片渕須直の対談となっている。(続)2020/09/12
遊々亭おさる
19
完膚なき敗戦を経験した戦中世代は娯楽の帝王だった映画において戦争をどのように描いてきたのか?彼らが制作に携わってきた太平洋戦争終結後から80年代までを中心にして語られる戦争映画の変遷。特撮技術を駆使して観客の度肝を抜く大作や笑いや恋愛で観客の心を掴む娯楽路線の作品、そしてジャーナリズムの観点から戦争を捉える社会派路線の作品など多種多様な作品群の作り手に共通するのは、生き残ってしまった後ろめたさと不条理に翻弄された人々への思い。時代は下って戦中の庶民の生活のリアルに拘ったアニメ作品で戦争映画は新たな局面に。2020/12/19