岩波新書<br> 教育は何を評価してきたのか

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岩波新書
教育は何を評価してきたのか

  • 著者名:本田由紀
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2020/07発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004318293

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内容説明

なぜ日本はこんなにも息苦しいのか.その原因は教育をめぐる磁場にあった.教育が私たちに求めてきたのは,学歴なのか,「生きる力」なのか,それとも「人間力」なのか――能力・資質・態度という言葉に注目し,戦前から現在までの日本の教育言説を分析することで,格差と不安に満ちた社会構造から脱却する道筋を示す.

目次

はじめに

第1章 日本社会の現状――「どんな人」たちが「どんな社会」を作り上げているか
第2章 言葉の磁場――日本の教育の特徴はどのように論じられてきたか
第3章 画一化と序列化の萌芽――明治維新から敗戦まで
第4章 「能力」による支配――戦後から一九八〇年代まで
第5章 ハイパー・メリトクラシーへの道―― 一九八〇~九〇年代
第6章 復活する教化――二〇〇〇年代以降
終 章 出口を探す――水平的な多様性を求めて

引用・参考文献
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ろくせい@やまもとかねよし

186
広く読まれて欲しい良書。政策や制度で変遷する教育。その前提から、日本の教育を能力、素質、態度で論考。具体的なデータを精緻で公平に分析し、論証と考察を表す。第二次ベビーブーマーである私にとっては、80年代の間違った能力主義による教育施策はかなり実感と近い。大正デモクラシー以降、教育施策で偏重された公平な過程。それにより形骸化されてきた本来の学力。戦後高度成長。不足した労働需要は学力を養うはずの教育施策は骨抜きに。そして「学力」は抽象的な「人間力」に。教育は画一化と相容れない。提案する多様な教育制度に賛成。 2021/04/03

rico

90
能力・資質・態度の三要素はウエイトや形を変えつつ、教育の評価軸として長年使用されてきたが、どれも「最強」になり、「最悪」の状況になったのが、現在かも。学力に加え、全人的資質(親ガチャ最強!)、特定の価値観と態度からの逸脱を許さない仕組み。逃げ場がないよね、これじゃ。のっぺりした「よい子」だけでは明日を拓くことはできない。多様性こそ力なのに。論文のようで難解な1冊。でもあとがきにあるようにこれは本田先生の危機感ゆえ。打開の方向性は示されてはいるものの、それも歪めて悪用されそうで・・・どうすればいいんだろう。2022/09/23

trazom

86
日本の教育が「垂直的序列化」と「水平的画一化」を目指してきた歴史と課題が、明確に整理されている。能力主義による極度の学力偏重問題が発生し、近年では「人格と学力の統一」を求めるが、それが新たな垂直的序列化を生んでいる。更に、道徳や公共の授業化などで、国家の意図に沿った態度・資質を持つ人材へと「教化」するという水平的画一化が図られている。重要なのは「水平的多様化」だという著者の主張に賛同するが、私は、そもそも、人格とか道徳とか、余りにも多くを学校教育に求めすぎだと思えてならない。家庭は一体何を教育してるんだ!2020/06/12

アキ

82
日本の教育の問題点を戦前から現代における歴史的展望を参考に日本型メリトクラシー、ハイパー・メリトクラシー、ハイパー教化が支配する異常さにあると指摘。あとがきで日本の教育と社会の問題や異常さについて、その根底にあるのは「言葉」ではないかという考えに行き着いたとある。メリトクラシーを能力主義と、Facultyを能力と訳し、戦前の教育勅語による水平的画一さと客観的な能力の評価として共通一次などの垂直的序列化にあることは事実。これからはオランダのイエナプラン教育のように個々の水平的多様化へ向かうべき、に同感する。2020/05/26

けんとまん1007

74
著者が後書きで書かれているとおり、なかなか読み応えのある一冊。さすが岩波新書!グローバルとか多様性とか言いながら、ますます系列化、単一性、階層の固定化の方向に向かっている今だからこそ、意義のある本だと思う。要は、自分達に都合のいいように解釈し、合意の無いまま進めているのだ。基本法にある、国語を理解し…の真逆な人達が、そうしているのは、ブラックユーモアどころか、ますます、閉塞感を強くし、この国を危うくしている。2020/05/14

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