内容説明
『このミステリーはすごい!』2020年度(宝島社)第3位『ザ・ボーダー』に並ぶ最高傑作!
復讐、正義、野望、喪失、裏切り、贖罪――
アメリカの「今」を活写した6篇を収録。
【解説】穂井田直美
「いま最も偉大な犯罪小説家」が活写する、アメリカの光と陰――
驚愕と感嘆、絶賛の声高し!
「驚き満載の玉手箱。ウィンズロウの多彩さが堪能できる上にテーマも深い」堂場瞬一(作家)
「市井の黙示録のような見事な一冊」田口俊樹(翻訳家)
「正義は最善ではない。本作が残酷で理不尽な物語か、自己犠牲の美談か、それは読者の正義感に委ねられる」丸山ゴンザレス(ジャーナリスト、第6話「ラスト・ライド」)
ニューオーリンズ市警最強の麻薬班を率いるジミーは、ある手入れの報復に弟を惨殺され復讐の鬼と化す――。壊れた魂の暴走を描く表題作はじめ、チンパンジーが銃を手に脱走する「サンディエゴ動物園」、保釈中に逃亡したかつてのヒーローを探偵ブーンが追う「サンセット」、映画原作『野蛮なやつら』の幼なじみトリオが引き起こす新たな騒動「パラダイス」など6篇を収録。犯罪小説の巨匠による傑作中篇集!
【収録作品】
壊れた世界の者たちよ
犯罪心得一の一(クライム101)
サンディエゴ動物園
サンセット
パラダイス――ベンとチョンとOの幕間的冒険
ラスト・ライド
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
167
作者初の中編集はいわば彼の過去と現在を映し出す鏡のような作品群だ。その中には過去作品の登場人物が一堂に会するファンのための作品もある。ウィンズロウ読者にとってはご褒美のような作品。彼が献辞に挙げたのは我々読者に対する「ありがとう」という言葉。今まで読んでくれた読者への感謝のプレゼントである本書は作者が全てを清算し、そして新たなステップに向かうためのマイルストーンのように思えた。今後、どんなテーマを我々読者にぶつけるのか。興味は尽きないが、今はただこの作者の極上のプレゼントの余韻に酔いしれることにしよう。2021/03/14
buchipanda3
122
「人は自らが壊された場所で強くなる」。ニューオーリンズや西海岸を舞台としたクライム小説集。どの話もグッときた。人は何と愚かで罪深いのか。復讐、欲望、堕落、無力感、あらゆる形で犯罪に手をそめる輩たち。暴力が暴力を呼び、感情のうねりに呑み込まれるように血が沸騰することも。それでも壊れた世界に抗うように自分の信念を取り戻そうとする者たちの姿が真っ直ぐに描かれていた。ハードなだけでなく軽妙さやもの哀しさのある自在な語りも見事。動物園が楽しい。ニール&ブーン競演も良かったが野蛮な3人組も気になる。読む本が増えた。2021/04/24
ずっきん
118
ウィンズロウのすべてが詰まっている。その多彩さ。どれもこれも愛しい。宝石箱のような中編集である。表題作でいきなりガツンとかまされ、続く三編は、同じ舞台、重なる登場人物達でこうもテイストの違う物語を綴るのかと嘆息する。また、ずっと付き添ってきたファンにとっては、磨き上げ、さらに洗練された初期のあの作風、なつかしい面々とたまらない仕様になっている。実は原書を読了済みである。それでも未読を無くし、マッシュアップに使用された作品は全て再読して、この翻訳版に備えた。もう一度、戦慄し、笑い、身悶え、そして泣くために。2020/07/20
のぶ
106
ウィンズロウについては珍しく、100ページ超の6つの中編を集めた作品集。最近、非常に長い長編が続いていたので、新鮮な気持ちで読む事ができた。ウィンズロウは「ストリート・キッズ」からずっと読んでいるが、本作の内容はバラエティーに富んでいて、いろいろな作風の作品を味わう事ができた。どの話も犯罪小説という事では共通しているが、いずれも犯罪者の人物像描写は秀逸だった。ある意味では、デビュー以来の過去の作品のウィンズロウの要素が詰まっていた。いかにもアメリカらしい世界が展開して、読んでいて楽しいものだった。2020/08/28
みゆ
96
ドン様お初♪中編集6品。冒頭、表題作からガツンとやられた。暴力、銃器、ドラッグ… 全てにおいてスケールが違う。米国社会の歪みハンパねぇ~(>_<) なのに美しい風景描写、切ないラスト。いいですねぇ♪一服の清涼剤は『サンディエゴ動物園』の若き巡査。野球場デートにキュン♡♡ 初ドン様堪能しました('∇^d)☆!!2021/02/23




