内容説明
太平洋戦争末期、理想に燃える軍国少年・柿見。激動の時代に翻弄される少年の行く末は……。社会の価値観・思想が目まぐるしく変化する中で生きた少年の青春と葛藤を描く、城山三郎の最重要作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
91
この作品を書くために作家を志したと城山三郎自ら認めた城山文学の最重要作。天皇と皇国日本に身を捧げる「大義」こそ自分に生きる道と固く信じ、戦争末期に海軍予科練に志望した愛国少年への鎮魂歌として、その時代生きた若者の挫折感と絶望感を鮮烈なタッチで描き、天皇制の問題を真正面から捉え、究極の文学に結実させた戦争文学の不朽の名作。何度読んでも、違った読後感が。自分の年齢と時代の流れが、影響しているのかもしれない。ウクライナ、台湾等、騒がしい世界だからこそ読む価値がある1冊。 2022/08/10
ふみあき
61
「天皇というものは、支配権力にとって実に便利な存在だからな……国民の批判を無視することができる。世論にすり代り、世論をおさえつける権威」。本作の初刊本の上木は1959年だが、それは“天皇の威を借る支配権力”対“革新勢力率いる国民”という図式が成立した牧歌的な時代だったのか? 現代では今少し事情は複雑なようで、大衆の右傾化が言われ、リベラルを称する知識人らが天皇(特に上皇及び今上陛下)に秋波を送るという、無様極まる事態になっている。個人的には表題作より「軍艦旗はためく丘に」の方が、より胸に迫るものがあった。2026/04/05
松本直哉
29
一方では、梯子を外されてもひょいと別の梯子に乗り換えるのではなく、孤立無援に絶壁にしがみつくように、天皇の人間宣言後もはや塵芥となった皇国の大義にいまだに固執する主人公、他方では、死児の齢を数えるようにして、天皇に貰った銃と引き換えに命を落とした息子の年齢の十九回、毎日鐘をつかずにはいられない主人公の友人の母、いずれも、忘れることへの拒否と時代への抵抗の姿勢を崩さず、しかし健忘症の明るく軽い時代の波にあえなくさらわれてゆく。天皇の戦争責任をまだ公然と問うことのできた、今となっては嘘のような時代でもあった。2025/05/05
Satoshi
12
著者の実体験に基づいた中編小説。天皇への盲目的な忠誠を説いた思想書である大義を軸に戦後が描かれる。戦中に多くの若者が命を捧げた現人神は人間宣言した。戦後、共産主義に傾倒するもの、天ちゃんと侮蔑するもの、戦前と同じ忠誠を誓うもの。世界がひっくり返った後の哀しみが文章に溢れている。2025/02/07
佐藤ゅ
8
「大義の末」このタイトルからして重く、もの哀しく、けっして楽しい読書になろう筈も無く、しかも私が手に取った文庫本は旧版で、学生帽をかぶった3人の少年が血染めの襷をかけていて、背景に日の丸の戦闘機が描かれている、なんとも恐ろしい絵の表紙だった。城山三郎が「この作品を書くために作家を志した」ほどに書き残しておかねばならなかった『大義』とは何なのか。哀しくやり切れない場面の多くを読み進め、主人公の苦悩にとても平穏ではいられず、それでも読まなければ、最後まで読まなければ、と思い思い、気力だけで読み切った感。2025/01/02




