内容説明
一九六○年代後半、インドネシアで二度のクーデターが起こった。事件発生の日付から、前者は九・三○事件、後者は三・一一政変と呼ばれる。この一連の事件が原因となって、独立の英雄スカルノは失脚し、反共の軍人スハルトが全権を掌握する。権力闘争の裏で、二○○万人とも言われる市民が巻き添えとなり、残酷な手口で殺戮された。本書は、いまだ多くの謎が残る虐殺の真相に、長年に及ぶ現地調査と最新資料から迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
69
題名にこそ大虐殺とついているが、実際はインドネシアで60年代後半に起きた政変のルポタージュ。この時期はイデオロギー対立がもっとも先鋭化した時期で、中国の文革やクメールルージュはよく知られているが、インドネシアでも同じような事が起きていたことは、本書によって初めて知る。虐殺の部分は本書の一部ながら、そこで語られている体験談が本書中一番価値があったのではなかろうかと思った。この部分、もう少し掘り下げて堀かったなあ。あと自分年代には単なるテレビタレントとしか思えた居なかったデヴィ婦人の意外な活躍。人に歴史あり。2020/07/12
skunk_c
67
スカルノ政権末期からスハルト政権へ移行する期間の政治史と、その間に起こった虐殺について、最新の知見や被・加害者へのインタビューを交えて明らかにした著。本書にも紹介されている馬場公彦『世界史の中の文化大革命』で知ったこのインドネシア共産党への弾圧について、より深い知見を得ることができた。また直前に『民衆暴力』を読んでいたため、インドネシア民衆が共産党関係者を虐殺するプロセスの中に、いくつか共通点を見いだすこともできた。スカルノの失策もあったが、政治過程の残酷さ、この時代の党派抗争の熾烈さを改めて感じた。2020/10/03
パトラッシュ
50
インドネシアでスカルノからスハルトへの政権移行期に大量虐殺があったと聞いていたが、その実相を初めて知った。政権上層部の権力闘争が民衆にも広がり、フェイクニュースで踊らされ隣人が殺し合うボスニアやルワンダを予告する事態が起こっていたとは。人は信じたいものを信じ、そのためなら簡単に人を殺す。それを煽動した欧米や見捨てた毛沢東など国際政治の冷酷さも浮き彫りにする。途上国だけの話ではなく、来月のアメリカ大統領選でトランプが敗れたら陰謀論を信じる熱狂的支持者が暴動を起こす可能性が冗談ではなく危惧されているのだから。2020/10/25
まると
29
こういうのを読むと、人間は何と恐ろしいことのできる生き物かと感じざるを得なくなる。殺戮に加担した人や40年以上、家族と離れて逃避行を続けた人の証言が生々しく、読ませる。この血生臭い大虐殺とその後の弾圧・差別がナチス・ドイツやカンボジアのそれと比べてあまり知られていないのは、独裁体制下で情報統制さえすれば、陰惨な歴史的事実も隠し通せることを証明しており、そのこと自体に恐ろしさを感じる。惨劇を後世に残そうとする学者の矜持を感じるとともに、インドネシア現代史の輪郭を学ぶことのできる良質なテキストでもありました。2022/09/17
kk
23
ちょうど私ことkkiがこの世に生を受けた頃、南の国インドネシアで繰り広げられた恐るべき政治的大激動の実態。言葉も民族も宗教も生活も同じくしていても、人は人に対して、かくも苛烈になれるものか。政治やイデオロギーといったものの本源的な恐ろしさに、今さらながら戦慄する思いです。アジアに於いて冷戦はこのように戦われ、我々自身の今日の暮らしもこうしたエピソードに繋がっていること、心の片隅にであれ、忘れずにいたいものです。2021/06/03
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