内容説明
一九四五年、第二次大戦の勝利の立役者チャーチルを抑え、総選挙で圧勝したのはアトリー率いる労働党だった。NHS(国民保健サービス)はじめ社会保障政策や産業国有化を次々と実現、現在のイギリス社会の基礎を築くと同時に、多くの旧植民地を独立させたアトリー政権は今なお高く評価されている。政敵チャーチルに副首相として仕えながら、激しい内紛を抱える労働党を信念でまとめ上げ、社会主義を信じ続けたアトリーの本格評伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
30
チャーチルの2度の首相時代の間に首相だった歴史の脇役的存在。英国史に詳しい人もその程度しか知らないアトリーについて、初のまとまった伝記が出た。なり手がなくて労働党首になった男の姿は一国の首相とは思えないほど地味だが、あきずに分裂を繰り返す野党を見慣れている日本人にとって常に分裂の危機にあった党をまとめ続けた手腕は見事だ。この粘り強さで植民地独立を進め、「ゆりかごから墓場まで」政策を実現した実績は大きい。87歳でこの大著を出した河合先生の言う通り、今の民主主義国は多様な意見をまとめられる指導者が必要なのだ。2020/08/13
MUNEKAZ
16
クレメント・アトリーの評伝。地味な人物という印象だが、国民保健サービスの制定、植民地の独立など現代イギリスを形作ったといっても過言ではない働き。ただ本書でも繰り返し述べられる因縁の相手・チャーチルの生涯と比較すると、やはり劇的さには欠けるかなと。また植民地問題や国際連合に対する左派らしい意識の高さも印象的であった。カリスマ性は無いが、持ち前の実直さとロバート・オーウェン以来の「イギリスの社会主義」を奉じる信念で、党をまとめ上げ、転換期のイギリスを指導した実績は、偉大な首相の名に相応しいのかもしれない。2022/04/01
ジュンジュン
8
歴史の教科書に登場する偉人にも二種類あると思う。何冊も関連本が出版される有名人とそれ以外。クレメントアトリーは現代史のページにちょこっと登場するだけの後者。本書は間違いなく本邦初の、そして多分最後?の評伝(あくまで日本では)。例えばチャーチル、何冊もあるおかげで理解は深まるが新鮮味は薄れる。逆にアトリー、殆ど何も知らないお蔭でめちゃくちゃ面白い!「勝利を敗北のように言う」、「面白くなりそうな話を面白くなくする達人」、「羊の皮を被った羊」…散々なアトリーはしかし、「揺り籠から墓場まで」の福祉国家を築く。2020/09/11
あまたあるほし
8
日本語で一般向けのアトリーの評伝を読めたことにまず感謝をしたい。ポツダム宣言の場に座ってて、「あれっ、チャーチルは?」と気になってはいたけれど、なぜ彼が首相になったのかよくわからなかった人物。チャーチルとのある種の信頼やアトリー自身の思想遍歴と政治家としての実績など、余すことなく書かれていて、大変良い本だった。まあ、色々気になるところはあったけど。「アトリーは、面白くなりそうな話を面白くなくする達人であった」って、一文が好き。2020/07/23
tekka
4
「貧者の大部分は富者に搾取されているから貧しい。裕福な人々に言うべきことは、『いつも周りにいる貧者を助けよ』ではなく、『彼らの背から降りろ』でなければならない」2022/12/17
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