明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語

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明治を生きた男装の女医 高橋瑞物語

  • 著者名:田中ひかる【著】
  • 価格 ¥1,980(本体¥1,800)
  • 中央公論新社(2020/07発売)
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  • ISBN:9784120053207

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内容説明

明治23年(1890)、横浜港を出航したドイツ汽船に乗っていた唯一の日本人女性、高橋瑞。ドイツへの女子留学生、それも私費で渡ったのは瑞が最初だった――。
 嘉永5年(1852)、西尾藩士の末っ子として生まれた瑞は幼い頃から利口な娘だった。維新後に家は没落、未婚のまま長兄の家で子守として過ごす。しかし、「瑞は学問をやるといい」という亡父の言葉を胸に24歳で家を出る。旅芸人の賄い、住み込みの女中、短い不幸な結婚など、様々な職を経て、明治13年(1880)、前橋の産婆・津久井磯子の内弟子となる。磯子の後押しで東京に出た瑞は、28歳で念願の学生となり、産婆の資格を取る。だが、産婆では救えない命がある、医者になりたい――瑞は、女にも医術開業試験の受験を許可するよう、内務省への請願を始める。
 この頃、荻野吟子(公許女医第一号)や生澤久野(同第二号)、本多銓子(同第四号)らも個別に請願を行っていた。彼女らの動きが実り、ついに明治17年(1884)、女子受験者を迎えた初の医術開業試験が行われた。瑞は女学生として初めて済世学舎に学んだ後、2年間の医学実習を終え、明治20年(1887)、公許女医第三号として医籍登録し、翌年、日本橋に「高橋医院」を開く。36歳だった。医院は繁盛したが、1年半後、「もっと産婦人科学を究めたい」とドイツへの留学を決める。女には大学で研究する道が閉ざされていたため、外国へ行くしか方法がなかったのだ……。
ドラマチックな高橋瑞の人生とともに、瑞が出逢い、見送った無名の女たちの運命、また、女医誕生への門戸を開いた仲間たちとの友情も感動的である。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

trazom

92
読んでいるあいだ中、ずっと目頭が熱かった。女医になるという決意を貫き通した高橋瑞の凛とした生き様に、胸がいっぱいになる。過酷な家庭環境、女性に門戸が開かれていない医学校や医術開業試験、ドイツに着いた後でベルリン大学は女子学生を受け入れていないと知って呆然となる留学など、度重なる艱難辛苦を、強い意志と抜群の行動力で乗り越えてゆく。公許女医第三号の高橋瑞だけでなく、第一号の荻野吟子、第二号の生澤久野、東京女子医大を創設した吉岡彌生など、登場する女性たちが輝いている。勇気を貰った気持ちになる。いい本だ。2020/09/03

どんぐり

86
渡辺淳一の小説に日本最初の女医荻野吟子の生涯を描いた『花埋み』がある。あれは面白かった。こちらは、荻野と同じ時代を生きた女医高橋瑞(1852-1927)である。瑞は、「産婆」の資格を取得した後に、「私は、女や赤ん坊を救う医者になりたい」と、当時「女人禁制」の医学校へ直談判して入学し、公許女医3号となった。東京・日本橋で開業し、37歳のときに、「産婦人科学を究めたい」と単身ドイツに留学するものの、体調を崩し帰国を余儀なくされた。→2021/05/26

ドナルド@灯れ松明の火

27
読み友さんの感想を読んで手に取った。女性に学問は不要・結婚して子を産むのが仕事という時代に、強烈な意思を持ち貧しい中、刻苦勉励し女性医師への道を開いた高橋瑞の一生。これは素晴らしい偉人伝である。医大の女性合格者制限等、日本人の男中心の考え方は未だに残っているなぁ。 お薦め2020/11/19

和草(にこぐさ)

19
女性が医師になるということの大変さ、偏見がこれほどひどいものだったとは知りませんでした。その中でも不屈の精神以上のものを持ち、女性医師として患者さんを診ることを大切にしてきた彼女達の功績は素晴らしい。2020/09/07

今庄和恵@マチカドホケン室/コネクトロン

17
フェミニズムというのではない、女性の生理(体の仕組みという意で)からその抑圧に声を上げてきた著者の渾身の作か。女の体は昔から男によって大切には扱われていなかった。そのことに異を唱えた日本での3番目の女医の物語。女性のストレスとは持っていないものを獲得するためのしんどさで、男性のそれは持っているものを失うこと、ゆえに女性のストレスの方が前向きでメンタルにも悪影響ないってのを納得。失う恐れではなく獲得する希望。医学部入学で男子に下駄履かせている現状、何も変わっていない。有能な女性を登用できないのは損失でしか2021/07/22

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