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内容説明
混迷の深まる現代に、何らかの指針を求めつつ、現実世界をひたむきに生きる人々にとって、文学は「即興性のない教養」として魅力的、かつ有用な存在ではなかろうか。「光文社古典新訳文庫」を立ち上げた駒井稔が、その道の専門家である翻訳者14人に初歩的なところから話を聞いた。肩の力を抜いて扉を開け、名翻訳者達の語りを聞くうちに、しだいに奥深くまで分け入っていく……。紀伊國屋書店新宿本店の大人気イベントの書籍化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
107
光文社の新訳古典文学は画期的だった。何故なら、このシリーズがあったからこそ、文豪という理由でハードルを高く、設定して読まず嫌いしていた作品に気軽に挑戦できたり、アチェベやジャン・パトリック・マンシェットなどの作家に出会うことができたのだから。この本は新訳古典文庫の立役者と翻訳家の対談集である。今まで凝り過ぎて苦手だったナコボフの文体の効果、「ソクラテスの弁明」の誤読しやすい点など、知らなかった事、意外な視点に再読熱が沸く(笑)同時に本を読む事、その作品を読んだ人の感想や考えを知る事の面白さも詰まっています2020/09/20
kaoru
65
光文社新訳に関わった翻訳者達と駒井先生の対談集。どこを読んでも面白いが『賭博者』を訳するためにドストエフスキーのドイツ旅行を再現する亀山郁夫さんの情熱に驚く。ロブ=グリエの『消しゴム』の訳者中条省平さんは高村薫に言及。フロベールの『三つの物語』に対する谷口亜沙子さんの繊細な感性。トーマス・マンのエロス三部作の岸美光さん、ディストピア小説『すばらしい新世界』の黒原敏行さん、ナボコフの『絶望』の貝澤哉さんなど名訳者たちがそれぞれの文学への理解を深く語る。教養ある方々の努力で古典的な名作を味わえると思うと→2021/02/19
燃えつきた棒
56
すこぶる付きの楽しい本。 既読本には、新たな発見や重要な示唆があり、未読本はどんどん読みたくなって来る。 それにしても、本書で紹介されている本の内、既読が僅かに4作品のみとはいかにも淋しい。 《もっとがんばりましょう》としか言いようがない。 もっと修行を積んでから、もう一度読んでみたい。 最も印象に残ったのは、高遠弘美さんによるプルースト『失われた時を求めて』だ。2020/09/30
molysk
53
「いま、息をしている言葉で。」をキャッチフレーズに、現代人の心に届くことばで、古典を現代によみがえらせることを目指して刊行されている、光文社古典新訳文庫。本書は、その編集長であった筆者と14人の翻訳者との対話を収録したもの。興味深かったのは、翻訳者の視点から苦心した点が伺えたこと。例えば、原文の一文が長い調子を訳文で再現するべきか、区切って読みやすさをとるか。邦題は親しまれたものにするか、新たな意味合いの題名を考えるか。あるいは、原語と日本語の構文や語彙の違い。古典を新たな形で届けてくれる翻訳者に感謝。2021/01/16
yutaro13
45
タイトルからはわからないが、光文社古典新訳文庫を立ち上げた編集長が、翻訳者に話を聞く紀伊國屋書店でのイベントを書籍化したもの。翻訳で思い出すのは米原万里の『不実な美女か貞淑な醜女か』という名言。さて、学生時代に古典をあまり読んでこなかった私ですが、フローベールやナボコフ、アチェベに興味が湧いたし、昔から読みたいと思っていながら読まずに人生を終えそうなプルースト『失われた時を求めて』も改めて読みたいと思えました。でも同時期に翻訳が始まった岩波版は完結してるので読むならそっちかな。光文社版の完結は見えず。2021/02/14