内容説明
昭和初期。自由を求め奔放に生きたひとりの女性の日記が出版されベストセラーとなった。それは林芙美子の「放浪記」。いま広く読み継がれている版は、後世の手が多く入り「成功者の自伝」と化していると指摘する森まゆみが、改造社版「原・放浪記」の生き生きとした魅力を紹介する。各章に鑑賞が入り、時代背景や芙美子の生涯についての解説も収録。林芙美子を知ろうとするならまず手に取るべき一冊。
目次
はじめに
林芙美子『放浪記』(改造社版)──各章に森まゆみによる鑑賞つき(放浪記以前──序にかへて──
淫売婦と飯屋
裸になつて
目標を消す
百面相
赤いスリッパ
粗忽者の涙
雷雨
秋が来たんだ
濁り酒
一人旅
古創
女の吸殻
秋の脣
下谷の家
付録 三白草の花)
解説
おわりに
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Masakazu Fujino
10
林芙美子の「放浪記」は何回も改訂されて出版されているが、後に手が入れられているものは、だんだんと「成功者の自伝」と化していき、本来の芙美子の思いや行動が見えにくくなってしまっている。こう指摘する森まゆみが、「放浪記」の原本とも言うべき1930年(著者の林芙美子は満26歳)刊行の改造社版『放浪記』を森まゆみの章ごとの解説付きで復刻出版したもの。 尾道から恋人を追って上京した18歳の少女が非正規労働者として大都会東京で生きる懸命な姿がまっすぐ描かれている。彼女のい威勢のよい啖呵は生々しいが小気味よい。2021/07/16
GELC
6
kindoleで完全版を無料で読めるが、成功後の芙美子による改変が著しいということで、初期の版を読んでみたく手に取った。やはり文章の勢い、みずみずしさが違う。また、各章に添えられている、森さんのピンポイント解説が短いながらも的確で、話を理解する上で非常に手助けになった。(正直、自分一人で読んでいると、第一部がほぼ時系列に並んでいることも気づかなかった。。。)Kindleや新潮社版に挑んでみたが難しかったという方に、ピッタリで強くオススメしたい。2023/07/26
Gen Kato
2
読みはじめてすぐ「しまった、これ、単行本で持って&読んでいた」と気づいて凹む(凹みつつまた読んでしまいましたが…2020/08/24
Taku Kawaguchi
0
私は宿命的に放浪者である。 私は古里を持たない。 の有名な冒頭の一節で始まる本書は古典です。が、今でも分かり易い話なのが読み続けられる理由かもしれません。2024/02/24