内容説明
首都ブラジリアの衛星都市、セイランジャ。その路上市場では、貧困地帯である北東部から移住してきた人々が働いている。貧乏人を自認する彼らは、ときに警察の取締りから逃れながら、働き者であることを誇り、困っている人に手を差し伸べる―
路上商人たちの「正しさの規範」と「善さの規範」から、階層を越えた連帯の作法を探る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kan T.
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不平等が道徳的に許されない、しかし同時に不平等が日常において自然化され黙認されているブラジルの路上での、物の売り買い、そして贈与や邪視をめぐる心情の動きを描く民族誌。人混みのなかの「にんにく、にんにくー」「アイスキャンデー、アイスキャンデー」という声が全編を通して聞こえる。2021/10/23
Ñori
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「一方的贈与は・・・他者との関係を断ち切る作用をも持ちうる。」という部分、少し気になった。 関係を断ち切るのは貨幣であって、むしろ返礼不要という態度が、関係の不平等を永続させることになり、それが受贈者にとっての「重さ」になりつづけるため、無意識的に関係が続くのではないだろうか。しかし第三者への贈与を介して、その「重さ」を雲散霧消することもできる。贈与をめぐる主観は予測不能で、モデル化もできないのだろうか。そういう意味では、贈与の話はカオス理論に近づくのかもしれない。エスノグラフィは本当に大事だと思った。 2019/03/22