内容説明
星新一、筒井康隆、アガサ・クリスティーなど人気作家作品の装画や装幀の仕事で知られる天才・イラストレーターが、社会のあらゆるものを〈植物〉と〈昆虫〉に見立て、ユーモアと風刺を織り込んで描いた40年前の幻の作品集が奇跡の文庫化。機知縦横に生み出されたイラストは、時代を超えて現在の我々の問題にもリンクしており、その普遍的な想像力に驚くばかり――。
目次
植物園
昆虫記
植物・酸素・人間 加藤秀俊
解説 荻上チキ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
72
星新一を初めとするSF小説のイラストが懐かしい真鍋博が、40年以上前に描いた作品がちくま文庫から発刊された。あの時代、垢抜けた幾何学的なタッチに未来を想像したものだ。この作品は、植物や虫に、様々な社会事象を比喩していたり、風刺が込められていたりする。決して古く見えず、どのページの絵もコメントも楽しかった。2020/02/26
nemuro
50
帯には「没後20年 天才イラストレーター幻の作品集が奇跡の文庫化」とあって、「社会のあらゆるものを<植物>と<昆虫>に見立て、ユーモアと風刺を織り込んで描いた作品を収録」。緻密で風刺の効いた作品が多数。できれば美術館にて原画で観てみたいところ。かつて人気作家作品の表紙装画でも活躍。どれどれと本棚を検索。星新一(2冊)、筒井康隆(14冊)、クリスティー(5冊)が21冊。うち真鍋博の作品は『エヌ氏の遊園地』(新潮文庫)のみ。貴重である。1970年代の作品を50年近い未来にタイムカプセルを開けるように見ている。2021/06/05
Vakira
45
星新一さんのショートショートの文庫カバー絵、今は和田誠のイメージですが、かなり前は真鍋さんのカバー絵だった様な記憶。筒井康隆さんの文庫のカバー絵も真鍋さんだった様な・・・ 直線を活用した超クールな画が未来感を醸し出す。SFイラスト第一人者の真鍋さんが描く植物と昆虫の図鑑。生命と無機質が融合した画です。昆虫の名前、属種、生態コメントが笑いを誘う。解説コメントはたまにブラックで面白い。もう、48年も前に書かれたもの。出会えて嬉しい。ちくま文庫に感謝。2024/02/06
しょうゆ
9
ジャケ買いして正解だった。見立てによる風刺が面白い。無機質で厳格、緻密なイラストと、簡潔な文章がマッチしている。ユーモアや駄洒落を含んだ批判的な言葉が、笑えると同時に「日本、70年代から変わってねーじゃん」という危機感を煽ってくる。個人的には昆虫記の方が好き。ビアスの「悪魔の辞典」的な雰囲気もありとても面白かったです。今の時代にご存命だったらどんな内容を描いていてんだろうか……と思った。2021/03/28
ヴィオラ
9
国内作家(星新一)さんには、ほとんど触れてこなかったので、僕の中で真鍋さんといえばクリスティーの人なんです。2次元も3次元が混ざり合ったようなカラフルなイラストは、子供心にカッコいいなぁ…などと思っていたものです。 その風刺も皮肉も、どことなく時代を感じてしまうものですが、古さは決してマイナスばかりではなく、古きを知りて…といった感じで楽しめるのと、あの頃からこの国はさして進歩してないのね…という感じで脱力するの繰り返しでした(^◇^;)2020/02/13