内容説明
330万部ベストセラー「大河の一滴」がいままた話題!
国民的作家、その真骨頂!
未曽有の時代に、作家がもっとも伝えたいこととは
「遺産」とはお金や土地ばかりではない。
私たちが相続するものは、経済的な「形あるもの」ばかりなのか。
人との挨拶の仕方、お礼の言い方、そのほか数えきれないほどのものを、私たちは相続しているのではないか。いまこそ「形なきもの」の中にある大切な相続財産に目を向けよ。
「魚の食べ方」という身近なエピソードから出発し、両親との記憶、日本の文化や戦争へと広がっていく話題。コロナで人と人のつながりが問われるいま、90歳に手が届く年齢となった作家が、深い思索と洞察から導きだした渾身のメッセージ。
あなたは何を遺しますか――?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あすなろ
76
かって読んだエピソードからスタートする題名である、こころの相続を語る一冊。何かと言えば、若い女性編集者が綺麗に焼魚を食べるエピソード。彼女は母から、その母はそのまた母からそれは受け継いだもの。ここで述べられているのは、金銭換算可な資産のことではない。それは、記憶の相続であり、面授されるものだろうと五木氏は論を進める。そして、聞きたいと望み、出来るだけ多く語れと結ぶ。面授による語り継ぎである。そして僕は、この五木氏のお歳でまだまだ我々にこうした新しい切り口で様々な事を教えられることにも驚きを感じるのである。2020/09/06
けんとまん1007
57
まさに考え始めていること。何を受け継ぎ、何を残すのか。自分の日常を通して、どう伝えるのかを考える。伝えるというよりも、どう受け取ってくれているのかだと思うようになった。一見、地味な目立たないことを続けることが、一番、大切なように思う。2024/01/20
大先生
8
土地や財産以外にも(大切な)「相続」するものがあるという内容です。日本のこころや戦争の記憶などですね。内村鑑三氏の「後世への最大の遺物」という本も、遺物としてお金や事業、教育があるけど「生き様」も大切だという趣旨の内容だったように記憶しています。確かに、我々は、普段意識しないだけで、財産以外に両親から様々なもの(良いものも悪いものも…笑)を相続していますね。文字では伝わらない部分があるため「面授」の重要性も指摘されています。とにかく両親が生きているうちに色々と聞いておきましょう。2023/06/30
すうさん
7
老齢に達した著者が亡くなった肉親の癖や行動が知らない間に自分の中に入っていることに気づく。親のことなのに知らないことも多く、なぜもっとたくさん話してこなかったか後悔する。恩返しをしようと思った時には既に親は亡くなっていることも多い。だからモノでなく精神をつなげることを「こころの相続」と書いた。本当は家族の歴史を学ぶべきなのかも。私は学校で近代史も学ぶ機会が少なかったうえに、一番近いはずの肉親のことも知らずに生きてきた。親戚付き合いや地域との縁が薄れていく現代ではさらにその機会もなくなっていくのだろう。2020/10/12
godbo
5
気付かぬ間に小さい頃から親の影響を少なからず受けているだろう。もちろん今は親と価値観が異なるところも大いにあるし、友人たちからの影響も大きい。しかし、まだ親と語るべきことがあるように感じる。少し照れくさいけれど向かい合って話す時間もつくらなければならない。残されている時間も多くはないのだから。2021/03/10