内容説明
なぜ日本では「痴漢」という性犯罪がこんなにも日常化し、カルチャーとして消費されてきたのか。そして、「被害」の対で語られるべき「加害」ではなく、なぜ「冤罪」ばかりが語られるのか? 戦後から現在までの雑誌や新聞記事を分析し、これまで社会の「痴漢」意識がどう共有されてきたか読み解く。解決策を考えていくために必読の書。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ただいま蔵書整理中の18歳女子大生そっくりおじさん・寺
76
面白いフェミニズム雑誌『エトセトラ』から出ているエトセトラブックスの一冊。こういう本を讃えるのに、こう言うと誤解をされるかも知れないが、この本、無類に面白い。痴漢という、女性を傷付ける犯罪の重さを再確認させられるのはもちろん、痴漢がマスコミでどのように語られてきたかという、痴漢戦後史でもある。まさかあの文豪が痴漢の味方をしていたとは!まさかあのタレントが痴漢をしていたとは!まさか痴漢専門誌があったとは!と、開いた口が塞がらん昭和平成。本として面白いが、決して半笑いで書かれたものではなく、真に怒っている。2021/02/25
松本直哉
32
電車に乗るというだけのことに非常な困難と屈辱を感じずにはいられない女性たちの気持ちにどれほどの男性が気付いているだろうか。やはりこの国は民度の低い国なのだろう。たまたま私自身はそういう被害に遭っていないけれど、どれだけ自己肯定感を奪われる卑劣な行為か察するに余りある。当惑のあまり身動きが取れないのを同意と見なされる屈辱も耐え難いと思う。つとめて公正で中立的な視点を心がけて書かれたように見える本文のあと、堰を切ったように警察官であった当時の自分自身の痴漢体験を語るあとがきに深く心を動かされた。2020/06/19
みなみ
31
統計からみる痴漢の発生状況を分析し、痴漢についての週刊誌等の掲載記事を紹介するほか、痴漢冤罪と女性専用車両の実態についても紹介する本。昔は痴漢が犯罪だとあまり認識されず、被害が矮小化されていたことがよく分かった。作者自身も警察官として勤務していたころ、痴漢にあった経験についても触れられている。2022/09/13
Narr
26
痴漢を巡る言説と実態を突き合わせ、日本社会での「痴漢」の語られ方を再確認できる研究。実際には報道以上に痴漢事件が存在するのに対し、逆に件数の少ない冤罪が痴漢を巡る言説の主流を成している事実、センター試験当日の痴漢件数は(確認されている上では)少ないことや、最も薄着である八月も実は件数が少ないこと、冤罪における課題は捜査機関にこそあることなど巷に溢れる誤解も解いている。個人的には、痴漢が性欲ではなく支配欲に基づいて加害をしているとの分析にハッとした。性欲ではなく支配欲、ここに私が取り組むべき課題がある。2020/03/12
テツ
26
たまたま自分は男(しかもかなり屈強な)だから被害に遭う確率はかなり低いだろうけれど、見ず知らずの他人に身体を触られるなんてとんでもなく不快だろうなということくらいは想像できる。冤罪の問題とかいろいろあるけれど、忘れてはいけないのは実際に痴漢をやらかす男が現実に存在しているということ。そいつらは勿論女の敵であるのだけれど、同じ性別だからという理由で肩身の狭い思いをするぼくたち性犯罪とは無縁の男の敵でもある。共通の敵に対してどう対処していくべきかと考えてしまう。満員電車はぼくたちも冤罪的な意味で怖い。2019/12/12
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