内容説明
無敵を誇った「バンクーバー朝日」は真珠湾攻撃を機に解散。すべての日系人は強制収容所へ送られる。ところがそんな時、元エース・テディ古本は密かに日本に入国しNHK英語アナウンサーとなっていた。軍国主義の嵐が吹き荒れる中でテディがとった驚きの行動とは? テディは日加の懸け橋となり愛する家族やチームメイトを救えるのか? 歴史に埋もれた壮大な物語がふたたび幕を開ける!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
96
バンクーバー朝日で主力選手として活躍されたテディ古本氏のその後の人生の物語。日本軍の情報戦でこのようなラジオ放送があったことは全く知らなかった。戦時下で米国社会(白人社会)と祖国の間で翻弄された日系移民の苦悩が描かれている。2018/01/24
s-kozy
51
バンクーバー朝日の続編というか後日譚。(なので朝日を読んでいなくても本作を楽しめます。)かの日系人野球チームの初代エースは太平洋戦争直前に日本に入国していた。野球のヒーローとしてのネームバリューと英語力が軍部に利用されてしまう。そこでテディーが取った英雄的行動とは?日系人差別を乗り越え、武士道を貫いた男の行動がなんとも眩しい。日系二世の視点からあの戦争のことを考えることができたのも貴重な読書経験となった。ちなみに朝日の時より著者の文章力は少しだけうまくなっております。2015/08/13
サチオ
13
「バンクーバー朝日」の元ピッチャー、テディ古本の後日談。武士道の捉え方一つとっても環境でこうも変わるのかと恐ろしく思った。守り伝える事を強く意識する重要性を感じた。許す事を是とする武士道をもってすれば戦争は避けられたのではないか。歴史を学ぶ事は豊かな未来の可能性を拡げるための手段であり、正しく理解する事を意識しないといけない。テディが失ったものは大きいが信念を貫いた彼が少なからず報われた事が何より嬉しかった。2015/02/22
速読おやじ
11
バンクーバー朝日の続編的なノンフィクション小説。知らなかった昭和史の一つが明かされる。太平洋戦争を日系人の視点から捉えたもの。武士道やら大和魂というものは、当時の日本軍によって陳腐で滑稽かつ邪悪なモノに作り変えられてしまったのか。それを日系人であるテディが実践しようとしていたこととは。。戦争モノを読む度に思うことは、果たして自分がその時代に生きたとして、誠実に生き抜くことは出来たのかということだ。この答えに強くイエスと言い切れないために、読後はいつも苦しくなってしまうのだ。2017/01/31
さんつきくん
10
著者の「バンクーバー朝日」の続編とも言える作品。バンクーバーは野球の話しだったが、こちらは、その朝日のエースとして活躍した古本のその後の話し。ひょんなことからカナダから日本へ入国した古本。用事が住みカナダへ帰ろうとしたが、当時の日本は世界でも孤立し、帰ろうにも帰れなかった。タイミングが悪かったのである。この時点で彼の運命は大きく動く。やがて第二次世界大戦が勃発。本格的に帰国できなくなる。古本は知人のつてでNHKの対米放送のアナウンサーとなる。捕虜となった米兵の肉声を流し、米国民を「日本と戦争はしたくない」2019/09/11