NHK出版新書<br> マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するII 自由と闘争のパラドックスを越えて

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NHK出版新書
マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学するII 自由と闘争のパラドックスを越えて

  • ISBN:9784140886205

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内容説明

NHK「欲望の時代の哲学」「欲望の哲学史」がテレビで大きな反響を呼び,これを書籍化した『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』が哲学書としては異例の3.5万部の大ヒットとなったマルクス・ガブリエルが帰ってきた! 今度の舞台はニューヨーク。資本主義と民主主義の「実験場にして闘技場」・米国の中心地で、ドイツ哲学のホープであるガブリエルは何を見、何を思い、何を語るのか?!
近年とくに自由と倫理の危機を語るガブリエルは、米国発のものの見方が危機の根源にあると見る。I・II・III章では、一見離れた「資本主義」と「哲学史」をつないで平易な言葉で語る。

まずI章で、高層ビルやブランドショップの並ぶ通りを歩きながら、そこに人々が感じる“自由”は米国の本質を表すと言う。しかしこの“自由”は「人間の意志」と「動物の欲求」を同一視してしまった結果生まれたものであり、カント以来の哲学者たちが唱えてきた「自由への意志」とは異なるもので、そのため人間は自ら人間性を破壊し始めていると説く。
次にII章で、国家情勢が数値で表されることについて、そこでは「生きる意味」の重要性が見落とされていることを指摘する。人は、数値が表すような「生存の条件」よりも、「生きる意味・目的」のほうを重視しており、各人がそれを味わうことのできる「倫理的社会」の構築に向かおうと言う。
そしてIII章で、資本主義の新たなエンジンとなりつつある人工知能(AI)について、これが「現実を意味あるものとして認識できない」ことを指摘し警鐘を鳴らす。すなわち、現実は五感を駆使した「感覚=思考」によってこそ認識されるし、あくまで人間知性の可能性を信じる「ドイツ的理想主義」を掲げる。
最後のIV章は、ガブリエルの議論を収録した話題書『未来への大分岐』で見事なコーディネーターとなった気鋭の経済学者・斎藤幸平との白熱の対話。ガブリエルは日本へも言及し、待ったなしの社会問題について徹底的に議論する。「どうせ資本主義は変わらない」というニヒリズムの蔓延を痛烈に批判し、すべての活動が持続可能性を志向すべきことを提言する。

全篇にわたって、「哲学は時代との格闘だ」というガブリエルと志を同じくするNHKプロデューサー・丸山俊一が、前著『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』に続いて番組のリライトを手掛け、ガブリエルの語りを簡潔に構成して、彼の思考の”息遣い”を的確に伝える。序章と終章では丸山がガブリエルの意をくんだ解説をつけて読者へのガイドとする。
読者は、全章を貫くガブリエルの「闘志」にシビれ、共鳴していくはずだ。彼は何に怒り、どう戦おうとしているのか? 「新実在論」の旗手として世界哲学の先頭に立つ若き天才が、加速する世界経済の中心地で語る言葉にいまこそ耳を傾けよう!!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

かみぶくろ

51
3.3/5.0 NHK番組の書籍版、しかも第2弾ということもあり、体系的にマルクス・ガブリエルの思想が理解できるような構成にはなってない。ただ人間を自然や数学に還元し認識を単なる脳の作用と位置付けるようなポストヒューマン的思想を斥け、道徳や倫理のような普遍的価値の復権を唱えているのは理解できた。昨今の風潮からはたしかに真逆で、新鮮かつ地味に刺さった。2023/02/27

くものすけ

10
前作の欲望の時代を哲学する1に引き続いて読んでみた。残念乍らNHKの番組は見ていません。少し哲学的な話で難しいので、一読して全文がすんなり理解できる内容ではないと思う。トピックスとしてはSNSの世界グーグル、フェイスブック支配に対する猛烈に反発されている事は良く分かった。2020/04/18

Book shelf

5
Ⅰでは彼の持論「新実在論」がメインでしたが、今回はそれも含めた哲学的思考で民主主義の崩壊、自由、行き過ぎた市場経済主義、人工知能、無法化したSNSなど世界を取り巻く問題の解決を試みる。GAFAなど巨大企業は個人情報をタダ同然に獲得していることを問題視、人工知能は「知能」ではないという視点、現実は法で守られているのにSNS上では法はないなど、普段は無関心なまま過ごしているが看過できない問題であることを気づかせてくれる。ただしテクノロジーを否定しているわけではなく使い方の問題であるという指摘に激しく同意。2020/08/27

えいこ

4
金銭的価値軸のみに集約されつつあるグローバル資本主義に「人生の意味」のような質的な価値軸を加え、自分と他人それぞれの人生の意味を最大化するような関係性の創出が必要。それってとめどなく手間のかかること。でも、それこそが、効率や生産性追求で失われた人間性を取り戻す行動なんだろう。GAFAは利便性を生んでくれたが、人為的に生み出された自分自身のイメージに沿って、予定調和的な「自由意志」により際限なく欲望が駆り立てられていく。フィクションの中に生きていることを自覚すること。立ち止まって思考し倫理観を取り戻すこと。2020/08/27

Keiko Yamamoto

2
 民主主義はどんな問題でも投票(多数決)で解決できると考えてはいけない。議題にさえのせてはいけない絶対悪というものがある。例えば「ユダヤ人を殺すべきかどうか」。  民主主義(多数決)において、私たちが誤った決定をすることもあることを自覚しておくべきだ。  間違った決定を極力避けるため、私たちは民主主義において真実の価値を持つ必要がある。  多くの人々が民主主義とは自分の利益が満たされるようにすべてのことに投票できる意味だと思っているが、それは民主主義ではない。なぜ投票するのかを問うべきだ。 2022/04/13

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