才女の運命

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才女の運命

  • ISBN:9784845919307

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内容説明

「『ミューズ』の美名のもとに、男性から社会的・創造的搾取を受けてきた女性たちを呪縛から解き放つ名著、待望の復刊!」
鴻巣友季子さん(翻訳家)推薦!

トルストイ、シューマン、ロダン、アインシュタイン、フィッツジェラルド…… 
歴史に名を残した男たちの傍らで、才能に溢れた女性たちが過ごした波乱の生涯、苦悩の日々。

かつて女性は就くことのできる職業も限られ、チャンスを与えられず、正当な評価を受けることもできない……そのような時代が長らく続きました。「偉人」と呼ばれ、後世に名を残した多くの人々が男性であることからも、彼女たちの犠牲の大きさを推しはかることは容易でしょう。そしてこれらの風潮は現代においても、すべてが是正されたとは言えません。

本書で紡がれるのは歴史に名を残す「偉人」のパートナーとして翻弄されながら、それでもなお自らの創造性を発揮しようとした女性たちの物語です。

彼女たちはそれぞれの分野で特異な才能の持ち主でしたが、家庭に入ることで夫や子どもの身の回りの世話に忙殺され、社会的な規範に押し込められ、あるいはパートナーの身勝手さに振り回されることで、自身の夢が閉ざされることを余儀なくされました。

ジェンダーの問題が社会全体の課題として強く認識されるようになった今日でも、同じような状況はあらゆるところに存在しているはずです。25年ぶりの復刊となった本書は、そのような状況に屈することをよしとしなかった気高き女性たちの孤独な闘いと魂の記録を通じ、人がその性差に束縛されず個人として生きることの価値、そしてそれを守ることの義務を問い直す一冊です。

【本書で取り上げる“才女”たち】
◎レフ・トルストイの妻 ソフィア(文学者)
◎カール・マルクスの妻 イェニー(政治活動家)
◎ロベルト・シューマンの妻 クララ(作曲家・演奏家)
◎オーギュスト・ロダンの愛人、ポール・クローデルの姉 カミーユ(彫刻家)
◎アルベルト・アインシュタインの最初の妻 ミレヴァ(物理学者)
◎ライナー・マリア・リルケの妻 クララ(彫刻家)
◎ロヴィス・コリントの妻 シャルロッテ(画家)
◎オットー・ヒンツェの妻 ヘートヴィヒ(歴史学者)
◎カール・バルトの妻 シャルロッテ(神学者)
◎スコット・フィッツジェラルドの妻 ゼルダ(小説家)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kaoru

40
大きな業績を上げた男達の陰で従属的な役割を強いられた才女達を描く。皆が大きな才能を持っていたかはともかく、忍従を強いられたイエニー・マルクスやトルストイ夫人ソフィア、精神的病を抱えた息子の世話に明け暮れたミレヴァ・アインシュタインの生涯は重い。精神病院で30年過ごしたカミーユ・クローデルはある意味でロダンの犠牲者。リルケの妻クララも彫刻家としてのキャリアと結婚生活の両立に苦しんだ。カール・バルトの秘書シャルロッテは「解放の神学」を先取りしつつ脳障害による入院で晩年を送った。女性が抑圧された時代に生きた→2020/09/15

星落秋風五丈原

27
二十五年前に刊行された作品の新版にあたって“新版のための前書き”が追加されている。取り上げられた女性のフルネームを見てぴんと来なくても、そのパートナーの男性の名前はよく知っている。それが大方の読者の認識であろう。  例えばトルストイの妻ソフィア。悪妻のイメージが強く、彼の不可解な死の責任まで負わされているが、残された日記からは、ひどい目にあったのはソフィアの方だ。『クロイツェル・ソナタ』『アンナ・カレーニナ』『戦争と平和』作品中で立て続けに浮気に走る人妻を描いてきたが、実は全て自分の事だ。 2020/07/12

くさてる

25
19世紀後半から20世紀前半にかけて、10人の高名な学者、芸術家の活躍に隠れて生きたその妻やパートナーたち。彼女たちにもまた世に出るだけの才能やエネルギーが存在したというのに、当時の結婚生活や常識、なにより彼女たちの夫たちこそが、その才能の開花を望まなかったことが解説されていて、正直言って読んでいて苦しい。けれど、その厳しい状況の中でもその才能を再評価する人々もいたことが救いかもしれない。ただの犠牲ではないと思いたい。でも、間違いなく犠牲だと思うしかない部分もある。現代でもきっと存在する犠牲の話だと思う。2020/08/22

三柴ゆよし

22
良書。知ってる人も知らない人もいたが、みなそれぞれに自分のなかで知らず知らずのうちにバイアスがかかっていたのだということに気付かされた。啓蒙とはこういうことを言うのだろう。カミーユ・クローデル、ゼルダ=フィッツジェラルドの章は読み進めるのが非常に辛かった。日本の近現代文学においては、武田百合子や島尾ミホなどはかなり特異な位置にある人で、それなりに充実した伝記も書かれてきたとは思うけれど、まだまだ本来の才能に見合った評価を受けているとは言い難いのではいか。特にミホは、あの評伝でもぜんぜん片手落ちだと思う。2020/03/28

ふるい

19
芸術や学問に打ち込む男たちは、彼らの自由な活動を妨げる家庭生活の面倒すべてを妻やパートナーの女性に押し付けることで、素晴らしい成果を生み出すことが出来るとされた。当時の社会にとって、彼女らの犠牲は当然の義務であった。夫と同じ程の、あるいは夫以上の才能の持ち主であった女性たちは創作や研究から引き離され、退屈な家庭生活に閉じ込められた。彼女らの消耗がどれほどのものであったのか、想像するだに辛い。トルストイの妻ソフィアの日記をはじめ、抑圧の日々に疲れ切り病んでいく彼女らの苦痛と悔恨に満ちた言葉が重くのしかかる。2020/04/05

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