内容説明
この終わりなき悪夢の物語は2015年、債務の束縛に抵抗して立ち上がったギリシャの人びとの、半年間の反乱の実録である。おぞましく行使される欧州の権力。だが希望は傷つくことなく残っている。これは普遍的な、そしてまさに日本にとっての物語なのだ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
79
ギリシャが財政破綻するまでに何が起こっていたのか、知りたかった。その時に出会った本がギリシャ危機の財相による自叙伝だった。EUが提案した、弱者に負担を強いり、IMFの人間もその有効性に疑問を持つ負債の返済計画に異議を唱えたバルファキス氏。しかし、その結果は余りにも苦いものだった。当時の経済優等生だったドイツとの駆け引き、利害関係の噛み合わなさ、それによる内部の人間の面従腹背によって孤立化していく様が克明に書かれている。そしてメディアによる一部の印象操作とそれに流されてしまう事については自分も注意しなければ2019/07/21
BLACK無糖好き
23
4年前、ギリシア財務大臣辞任のテレビニュースで、バイクで走り去る著者の映像を見ながら、やはりこうなったかという思いに囚われた。団体交渉を有利に進めるには相手側の最も厄介な人物を孤立化させ排除するのが有効な戦術。著者自身それを一番危惧しながらも、完全に嵌ってしまったようだ。◇本書はギリシャ債務問題についての、新生シリザ政府と債権団との交渉の過程が、これ以上ないほどドラマティックに著述されている。著者は大半の会議をスマホに録音していたようで、会話の生々しさは一級品。濃密さにすっかり引き込まれた。2019/06/13
34
22
バルファキスはギリシャの急進左派政権の財相(国民投票の直後に辞任)だったひとで、今は左派の凡ヨーロッパ的な政治運動を主宰しているようだ(DiEM25)。参考、「資本主義が民主主義を食い尽くす」 (https://youtu.be/GB4s5b9NL3I)。 非常にまともなことを言っているのだが、あまりに正気すぎて、われらの生きている正気を欠いた世界で聞き入れられることはないだろうと感じさせる。新しい政治の空間は挫折と失望の経験から生まれてくるだろうか。ともかく、必読。2019/06/16
ゲオルギオ・ハーン
13
EUの現状について疎いため、この本はとても衝撃的だった。欧州連合とは名ばかりで実態はドイツの政治家や官僚たちが中央に鎮座し、欧州各国に支配力を行使していたとは。著者のバルファキスは左翼政権の財務相としてギリシャ経済を建て直すために奮闘するが、ユーログループに屈した政権首班のアレクシスたちによって利用され、切り捨てられる。アメリカや中国が救いの手を出そうとするも部外者ゆえ欧州に深入りできずにギリシャに精一杯の同情を寄せる様子は悲劇的だった。EUについてもっと調べて、欧州の本当の姿を知りたい。2020/06/24
Hiroo Shimoda
11
ギリシャ危機の中心人物、バルファキス元財務相がギリシャとEUの闘いを振り返る。裏事情を全部暴露しておりEUとの交渉の過程が読み応えがある(何より500ページある)。当時、ギリシャが債務を払う払わないという報道を見て、厚かましい話と思っていたが、どういう理屈で払わないという主張をしていたか、よく分かった。2019/06/13