内容説明
「苦海浄土」に続き、魂の詩人・石牟礼道子が、生死のあわいにある人々へむけて綴った、現代の鎮魂の記。――豊饒なる不知火海から、天の水と天の魚を奪い生活を破壊し、やがて20数年にわたって人間の命を破壊しさった、世紀の受難というべき水俣公害。ついにチッソと直接交渉を実現、解体する日常との闘いが残された患者漁民の観たものは何か? 「東京の空の美しゅうございました……」は、誰でも望む言葉であって、誰でも云えない言葉になった。80年代の日本の現実、必読の一冊。
感想・レビュー
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にっかん
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講談社文庫版「苦海浄土」を読んだ後、すぐさま電子書籍で購入した。チッソとの闘争の様子が生々しく描かれる。筆者の言いたいこととは異なるかもしれないが、企業不祥事に際しては初動がとにかく全てだ、と感じずにはいられなかった。一度失った信頼を取り戻すことの難しさ、最初に被害者に対してどういった態度をとるかが全てを決定づけるといっても過言ではないと思う。被害者の心、ひいては魂に訴えかける企業責任のあり方とは何か?ということを、SDGsなどのキャッチーな言葉が喧伝される世の中で、改めて考えさせられる本であると思う。2024/05/21