内容説明
「県民二対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」――10万人以上の犠牲者を出した、昭和20年の沖縄戦。その惨状を想い、自決直前に電文で奏上した大田實(みのる)中将は、日本軍への反感が強い沖縄でも、多くの人に愛される、数少ない軍人の一人である。遺族の協力を得て、初めて明らかにされる悲劇の提督と、一家の昭和史。沖縄戦の悲劇を描いた、力作ノンフィクション!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
二人娘の父
7
島田叡の映画の流れから2冊目。著者は同じ田村洋三氏。氏のクセもだいぶ飲み込たので、読むのも楽しくなってきた。一人の軍人の生涯(死後の家族模様も含む)をここまで丹念に取材するエネルギーに脱帽。私の祖父も海軍にいたこともあり、たいへん興味深く、学ぶことも多かった。それにしても思うことは、当時の軍隊でいかに人の命が軽く扱われていたのか、ということ。「死は鴻毛よりも輕しと覺悟せよ」と軍人勅諭にはあるが、沖縄戦における兵士の扱い、県民の扱いはまさにこれである。日本が歩んできた戦争の歴史を知る上で必須の書である。 2021/04/07
筑紫の國造
3
沖縄戦を戦った大田實中将を中心とし、その家族の戦後までの歴史を追いかけたノンフィクション。家族をはじめとした膨大な証言と、佐世保で一家が住んでいた家を探し出す徹底した現地調査で非常に読み応えのある作品に仕上がっている。大田中将の人柄と、「沖縄県民斯ク戦ヘリ」の電文が中将死後までも残り、人々を感動させ、沖縄返還にまで影響を及ぼしていることが、本書ではっきりと示され、改めて驚かされた。弱点は歴史用語の使い方間違い、中将が沖縄戦で具体的にどのような戦術をとったかあまり書かれていない事。それでも、傑作とよべる本。2016/05/17
Tatsu
3
昭和20年の沖縄戦の際に「沖縄県民斯ク戦ヘリ。県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」と本土に向けて打電した太田海軍中将の一家の話。11人という結構な子沢山で子煩悩な人だったとか・・陸戦隊の指揮官として沖縄に着任、苦労する沖縄県民の状況を見かねて打った電報が本書のタイトルとなっている。優れた市民としての軍人がどのようなものかのお手本のような気がする。2012/10/16