内容説明
冬の国(ひべるにあ)=アイルランド。スイフトの『ガリヴァー旅行記』に導かれ冬の国(ヒベルニア)=アイルランドを訪れた「わたし」。謎めいたスイフトの生涯を、一人の女性への「激しい友情」を核に読み解くタテ糸。「わたし」と妖精のような男たちとの「優しい性愛」を物語るヨコ糸。さらに、架空の国・ナパアイをガリヴァーのように旅する「わたし」が目にする、グロテスクな意匠。重層的な表現でタペストリのごとく織られた、富岡文学の達成。孤絶した魂が谺し合う交響詩! 野間文芸賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
32
ひべるにあはヒベルニア。ローマ時代の地の果て、「寒くて遠い冬の国」、アイルランド。その首都ダブリンで生まれたスウィフトの謎の多い生涯の考察から始まる「わたし」のアイルランド紀行は、スウィフトの人生とガリバー旅行記の不思議な国々、現在のアイルランドと架空のナパアイ国に「わたし」の現在と過去が混じり合い、いつの間にか過去と現在と幻想が絡み合う不思議な場所(ひべるにあ?)に連れてこられていることに気が付きます。この饒舌で幻想的な旅が、「いずこも同じ」ミートソースで終わるというのも悲しくおかしい余韻を残しました。2017/04/04
rinakko
13
再読。“スイフト”の伝記と“わたし”のアイルランド紀行に、“わたし”の架空の国ナパアイ滞在記…と、今から過去へ現実から虚構へ曖昧な境界を自在に行き来する重層的な作品。『ガリヴァー旅行記』にもみられる厭世観や人間不信、女嫌い、ステラとの特異な恋愛…など、スイフトの生涯に纏わる謎についての思案の件は面白い。ナパアイ国では異様な風俗が流行り、“わたし”が連れ歩く少年ケイは妖精にさらわれる。堕天使でもある妖精たちの斜陽、日の当たらない冬の国(ひべるにあ)の小昏い光景、そのもの哀しさが全篇に行き渡り、儚いが美しい。2016/12/13
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