余生と厭世

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余生と厭世

  • ISBN:9784152099501

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内容説明

七十二歳の誕生日で引退することを決めた精神科医のもとに、最後の新患が現れる。希死念慮と自殺の衝動に苦しむ彼女とカウンセリングを重ねるなかで、精神科医は自らの人生と老いや死へのおそれを見つめなおす。デンマーク人心理学者が静謐な筆致で描く小説

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

ケンイチミズバ

74
ラスト近くまで人と深く係わりをもつことがない。果たして、人間嫌いで精神科医が務まるのだろうか、患者に親身に向き合いカウンセリングが施せるものだろうか。引退までのセッションをカウントしながら消化するだけの日々。日課を無難に終えても、その余生はこのままでは甚だしく疑問だ。味気なくもそんな人も世の中には存在するだろうが。案の定、ある患者からは自分の内面を見透かされてしまう。そして自傷行為に走るアガサとの出会いで自分の変化、自分の心の揺らぎに驚きながらラストを迎える。結末は容易に想像できるが、創作の面白さはある。2023/06/26

38
デンマーク人の臨床心理士による、1948年のフランスを舞台にした、70代の精神科医の物語。原題の「Agathe」は、フランス語風に言えばアガッツであり、彼の最後の新患の名前である。彼はアガッツとの対話を通して、自分自身を見つめ直す。アガッツが来る前、彼は孤独だった。だがアガッツと交流する中で、彼の中で何かが芽生え、少しづつ他者との交流を持つようになる。表紙に惹かれて読み始めたのだが、中身も素晴らしく良かった。北欧の作品はいくつか読んだことがあるけれど、デンマーク文学は多分初めて。本当に良かったので、推薦。2024/02/11

にゃおんある

37
不幸せな人を幸せにに導く人が不幸せだった精神科医。とても精神科医という職業が気になっていて本を選びました。魔法の言葉って存在するのか、はたまたもっとシビアな世界なのか。不幸せの原因とはなにか、そこから解放されるとしたら、どのような例が挙げられるのだろう。僕は人を幸せに導く言葉があるとしたら、けっして前向きな言葉だけではないと思うのです。音楽だって明るい曲が人を鼓舞するのではなく、悲しいときには哀れな曲に元気づけられることもあるのです。人から与えられたものではなく、……2020/10/13

あさうみ

31
短くまとまっていて読みやすい。仕事に見切りをつけ、孤独な人生をただ時を流れるように過ごす精神科医。リタイアを決めた今に、心に穴と傷を抱える患者に出会い、諦めから希望へ自分の気持ちが拓かれていくのが心地よい。周りには思っている以上にかけがえのない人達がいる。仕事に疲れた今、まさに丁度良い本でした。2020/06/28

そふぃあ

18
アガッツが来たのが別のタイミングだったら、老医者は何も変わらなかったかもしれない。あのときに彼女が現われたからこそ、彼は自らの孤独や患者たちと真に向き合うことができた。たとえ嫌気の差す仕事でも、終わる間際になって初めて、かけがえのないものに見えてくるように思う。同じことが人生全体に言える。私ももうすぐ死ぬという時になったら、色んなものを受け入れられるかもしれない。そうであればいいと思う。リンゴのケーキ食べてみたい。 読みやすかった。訳者あとがきはちょっと微妙。2020/11/18

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