内容説明
手話通訳士の荒井尚人は、ろう者の親から生まれた聴こえる子――コーダで、ろう者の日常生活のためのコミュニティ通訳のほか、法廷や警察で事件の被疑者となったろう者の通訳などを行っている。そんなある日、荒井が手話を教えている場面緘黙症の少年が、殺人事件を目撃したと伝えてきた。NPO職員が殺害された事件の現場が、少年の自宅から目と鼻の先だったのだ。話せない少年の手話は、果たして証言として認められるのか!? ろう者と聴者の間で葛藤しながらも、架け橋になろうとする手話通訳士の奮闘を描いた、『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に連なる感涙のシリーズ第2弾。/解説=頭木弘樹
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
旅するランナー
289
デフ·ヴォイス②。「龍の耳」の意味を知る時、心震えます。聴覚口語法学習など、ろう者を取り巻く状況が、さらに掘り下げて描かれます。ろう者が自分の言葉を持つことの重要性を知ることができます。2作目にして、より深みが増した印象です。2022/04/06
おしゃべりメガネ
142
ハードカバーで読んで以来、四年半ぶりの再読でした。あとがきにも書いてありましたが、まさか続編がという驚きと、やっぱり「荒井」さん、帰ってきてくれたという安堵がミックスされ、期待が必然的に高まるなか、軽々とクリアしてしまう本作は読みごたえ十分です。今回は「ろう者」のみならず、あらゆる場面での手話の活用を学ばせてくれます。特に表題作は前作同様、ミステリーとしても非常にレベルが高く、かつ'緘默症'について新たな知識を深めるコトができます。「荒井」さんファミリーの更なる幸せを願って第三弾を読みたいと思います。2022/09/04
mint☆
140
"龍の耳"とはそういう意味だったのか。タイトルの意味がわかると感慨深い。この本を読んでから何度も通ったことのある道に聾学校の看板があると気がついた。今まで全然目に入らなかったのが信じられない。前作同様ミステリーでもあり、ろう者を取り巻く生きにくい環境を丁寧に描いていている。発達障害は親の責任、のような「正育学」の法案が通ったら怖いなと現実じゃないのにハラハラでした。今作もよかった。次も読みます。2021/11/20
五右衛門
111
読了。待ちに待って読み終わりました。以前にも増してミステリー感が強くなっていませんか?全編を通じて主人公の孤独感を引きずっていましたが娘の素朴さ、緘黙症の彼との通じ合い辺りは心が和みました。手話を通じて本人たちは唯一の言語、一般人には秘密の言語的な行き違いにもハッとさせられました。最後はハッピーエンドですよね。家族が出来たんですよね。次巻も楽しみに待っています。文庫になるの遅くありませんか?2021/03/01
venturingbeyond
105
シリーズ第2作。連作短・中篇3作が収められており、どれも前作と同様、心地よい読後感。第1話「弁護側の証人」と第3話「龍の耳を君に」は、大団円のかなり前から結末が見えてくるが、それでも読後のカタルシスは全く損なわれることはない。メインのキャラクターの人物造形はもちろん、前作に続いて登場する何森刑事、益岡さん、長澤さんなど、脇のキャラクターも魅力的。また、エンターテイメントと啓発性が両立している点も、前作と同等かそれ以上。時間ができ次第、積読中の第3作『慟哭は聞こえない』に手を伸ばすことになりそうです。2023/01/15