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内容説明
聖徳太子は,偉人だったのか,ただの皇子だったのか.古代史研究の第一人者が,史料をもとに,丁寧にその実像に迫ります.手がかりは,法隆寺の釈迦三尊像に刻まれた銘文や,太子の自筆とされるお経の注釈書など.著者独自の視点で史料を読み解き,見えてきた姿とは? 教科書の丸暗記ではない,歴史学のおもしろさを味わおう.
目次
はじめに
系 図
序 章 ほんとうの聖徳太子を求めて
一 聖徳太子と厩戸皇子
二 太子をめぐるさまざまな史料
第一章 釈迦三尊像の銘文にみる太子
一 銘文のなぞ
二 銘文を読んでみよう
三 銘文からわかること
第二章 太子はどんな政治をしたのか
一 太子の立場
二 十七条憲法と冠位十二階
三 外交における役割
第三章 聖徳太子の仏教理解
一 仏教の伝来と広がり
二 天寿国昻帳を読み解く
三 太子が注釈した経典
第四章 斑鳩宮と法隆寺
一 飛鳥と斑鳩
二 斑鳩という土地
三 発掘された斑鳩宮
四 宮に併設された法隆寺
終 章 聖徳太子の変貌
一 初期の太子崇拝と法隆寺の再建
二 女性たちの信仰
三 近代から現代へ
あとがき
聖徳太子年表
図版引用元一覧
索 引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
50
物的証拠から伝説的な「聖徳太子」の実像を探る。釈迦三尊の銘文について、実物の観察から、その同時代性を明らかにする。したがって「法興」年号の実在性も確からしい。こうなると年号の公私について定義の変更が必要だろう。焼失後の法隆寺の再建が復古調でされたことから、当時すでに太子崇拝が始まっていて、有力な子孫のいない太子の生前の存在の重さがわかるという論法には肯ける。2017/05/27
井月 奎(いづき けい)
46
豊富な資料にあたってつぶさに論証し、それをわかりやすく書いた良書だなあ、と読了。本を閉じて驚きました。岩波「ジュニア」新書なのです。ジュニア。いや私の脳みそがジュニアなのは認めるのはやぶさかではありませんが、それ以上に岩波書店、良いですよねえ。で、この本では、確定的なことは言えないけれども超人的な伝説や言い伝えがつくられるのもむべなるかな、ということを思わせてくれる内容です。梅原猛の反対側で、南極と北極。しかしそれが少なくとも私には双方魅力的で説得力のあるものです。それこそが聖徳太子の大きさなのでしょう。2020/01/27
Shoji
44
偉人として語られがちな聖徳太子の実像を解明しようとしています。我々が学校で学んだ時代の聖徳太子といえば、偉人中の偉人、この国を造った人と教えを受けました。現在では、それは死後に美化され脚色され伝説化された姿であると唱える人が多くいます。実際、現代の教科書では偉人「聖徳太子」ではなく、歴史上の人物「厩戸皇子」として扱っています。この本は、大学の先生が書いた本ですが、史実に基づき客観的に解説しています。太子が為政した飛鳥時代の考証も含めて、興味を持って読むことが出来ました。2021/06/15
Toska
26
虚像が膨らみすぎた聖徳太子の「ほんとうの姿」に挑む硬派な一冊。確実な史料だけに頼る関係上、手持ちのカードは少ないのだが、それらを上手く組み合わせ、粘り強く実像に迫っていく。結論もさることながら、そのプロセスだけで充分に読ませる。最後に現れた太子の姿は、「大政治家」というよりは「仏教のえらい人」に近い印象。だからこそ、前近代にあっては独自の信仰の対象にまでされたのだろう。2025/03/24
to boy
26
伝説化されることの多い聖徳太子のほんとうの姿を知りたくて図書館から借りてきました。ジュニア文庫という割には学術的な記述が多く、語り口も分かりにくい感じ。学者としてなるべく間違いのないように細かい配慮をされているようですが、もう少し簡単に書いて欲しかった。太子の真の姿を探ることだけでなく、何故神格化されたのかについてももう少し詳しくしりたかった。2022/06/06