岩波ジュニア新書<br> クマゼミから温暖化を考える

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岩波ジュニア新書
クマゼミから温暖化を考える

  • 著者名:沼田英治
  • 価格 ¥902(本体¥820)
  • 岩波書店(2020/06発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784005008339

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内容説明

大阪に生息するセミの7割がクマゼミと言われ,同時に分布域も東へ北へと拡大している.クマゼミ増加の原因は,温暖化にともない冬の寒さが緩和されたせいなのか? はたまた乾燥が進んだことが原因なのか? 地道な調査・実験から温暖化との関係を明らかにする.科学的真理を探究する過程の奥深さと楽しさも味わえる一冊.

目次

はじめに

第1章 近年にみるセミの変化
大阪におけるクマゼミの増加/変化したクマゼミの分布

第2章 クマゼミが引き起こした問題とは
セミによる食害/騒音の問題/光ケーブルの切断

第3章 今,起こっている温暖化とは
地球温暖化とその原因/都市の温暖化とその原因

第4章 温暖化をめぐって
なぜ温暖化の問題は難しいか/温暖化の問題点を誇張する考え/温暖化の問題はないという考え/温暖化をめぐる複雑な背景/わたしの考え

第5章 温暖化と昆虫の変化
温暖化が昆虫に与える影響/温暖化による分布の変化

第6章 セミの研究を始めた経緯
都市問題研究に採択/一生でもっとも危険な時間

第7章 冬の寒さとクマゼミの増加の関係
冬の寒さの緩和/卵の寒さに対する耐性/野外においた卵の孵化

第8章 夏の乾燥とクマゼミの増加の関係
都市の乾燥化/乾燥条件下での孵化

第9章 土の硬さの影響
セミの分布と土の硬さ/幼虫が土に潜る能力

第10章 梅雨に孵化するために
雨季に孵化する重要性/温暖化と梅雨の時期/過去の孵化時期の推定

第11章 クマゼミから見えてきた温暖化
クマゼミの増加と温暖化/温暖化以外の要因/今後の予想/おわりに――わたしが強調したいこと

もっと勉強したい人のために
あとがき

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

香菜子(かなこ・Kanako)

23
クマゼミから温暖化を考える。沼田 英治先生の著書。地球温暖化問題や環境問題を考えるのは簡単ではないから地球温暖化問題や環境問題は自分とは関係のない話として終わらせてしまいがち。でも地球温暖化問題や環境問題に正面から向き合わないと人類の未来はない。自分にとって身近なクマゼミからなら地球温暖化問題や環境問題を考えることならできる人は多いはず。地球温暖化問題や環境問題を考えるきっかけをだれにでもわかりやすく与えてくれている沼田 英治先生を尊敬。2022/08/04

18
学生の頃、真鶴を歩くと\シャンシャンシャンシャン/という聞き慣れない蝉の声と足許の目が真っ赤で薄緑に縁取られた透明の巨大な蝉の死体に驚いたものだった。今ではウチからもクマゼミの声が聞こえてくる。クマゼミが生息地を広げた要因として、梅雨の時期がずれクマゼミが卵から孵化しやすくなったこと、クマゼミの幼虫はアブラゼミよりも硬い土を掘る力が強いこと、都市部で樹木が減ったせいで飛行距離に劣るアブラゼミは木から木へと飛ぶ間に鳥に捕食されやすこと等をあげている。要は温暖化のせいというより人間のせいなんだよな…。2016/10/22

miho

7
ここ数年、クマゼミの鳴き声ばかりだと感じていた。西日本にクマゼミが著しく増加したのは温暖化が原因なのか、そうだとすれば温暖化によるどのような影響からなのか、実験を積み重ね原因を追究していくさまがわかりやすく描かれている。温暖化によって単純な生態系になってしまうのは気がかりだ。2017/06/19

yamakujira

7
大阪では、かつてアブラゼミが多くてクマゼミは珍しかったのに、今ではクマゼミばかりになっている。これが温暖化の影響なのかを検証するするのが本書の骨子だけれど、温暖化に関して解説するイントロダクションも興味深い。昆虫の生息域北上については、温暖化による気温上昇に原因を求める単純な図式が多い中で、疑問を持って多角的に検証する内容は、科学の在り方を示唆するようにさえ感じる。クマゼミの増殖は温暖化が間接的に関与してるものの、なかなか複雑でおもしろい。東京では思ったほどクマゼミって増えてない気がする。 (★★★☆☆)2016/08/09

流石全次郎

5
昆虫の分布域の北上は、イシガケチョウやツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハなどがよく知られています。クマゼミもそのなかの一種。この現象は「おお、地球温暖化の影響だ」と温暖化の指標として語られがち。昆虫学者として温暖化の関係性を問われると、雰囲気だけで「そうですね」とは答えられない。正しくは「調べてみないとわかりません」。種の生態的知見、近似種との相違、地球の気候の歴史的な推移、生息環境の特性、共同研究者あるいは他分野の専門家との交流。地球温暖温暖化と分布域拡大についての研究プロセスとそこから得られた結果。2020/07/02

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