岩波新書<br> アメリカの制裁外交

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岩波新書
アメリカの制裁外交

  • 著者名:杉田弘毅
  • 価格 ¥924(本体¥840)
  • 岩波書店(2020/06発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004318248

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内容説明

米外交は経済制裁,特にドル覇権を背景とする金融制裁を抜きには語れない.しかも北朝鮮やイランなどの敵対国やテロ集団にとどまらず,根拠法の「国外適用」により第三国の企業や個人も制裁の対象になり得る.なぜ経済制裁は多用されるのか.それは世界に,そして自国に何をもたらすのか.「米国第一主義」の内実を抉る渾身の一冊.

目次

はじめに



第1部 司直の長い腕

第1章 孟晩舟はなぜ逮捕されたのか
 豪華な保釈生活/米国の威信をかける/米国のスパイがいた/ファーウェイの誤算/国際緊急経済権限法/米金融システムを守る/ブラック・スワン/米中覇権争い/日本の企業も対象に

第2章 経済制裁とその歴史
 三形態とその効果/安保理制裁の限界/制裁目的の多様化/戦争と経済制裁/世界大戦と禁輸/冷戦下の経済制裁/朝鮮戦争とOFAC/最初のイラン制裁/イラク制裁の失敗/米国の金融制裁は「死刑宣告」



第2部 アメリカ制裁の最前線

第3章 米制裁を変えた9.11――テロ
 異彩放つ財務省/ブラックリスト/八〇対二〇の原則/愛国者法/門戸を開いたSWIFT/スイスの銀行も屈服/消えた名門銀行/安保理財務相会合

第4章 マカオ発の激震――北朝鮮
 資金洗浄の懸念先/ドル紙幣偽造が発端/二一世紀型の精密兵器/北朝鮮の暴発/地球を一周した北朝鮮マネー/北朝鮮はなぜ核実験をしたのか/米政府内の対立/金正恩も金融制裁対象に/外交の欠落

第5章 原油輸出をゼロに――イラン
 国民的英雄を殺害/イラン制裁の源/秘密核施設/Uターン決済禁止/徹底的なイラン締め出し/JCPOA/積み残し/トランプの気まぐれ

第6章 地政学変えたクリミア制裁――ロシア
 困難になった平和条約/クリミアの併合/エネルギー産業を狙い撃ち/米大統領選への介入/人権違反も対象に/外国の「悪事」を懲罰/議会の縛り/広がる対象,薄れる効果/欧米の溝



第3部 制裁の闇

第7章 巨額の罰金はどこへ
 史上最大の罰金/不明朗な制裁金の基準/政治が金をむしり取る/金の使い道は?/警察官のスマホ購入資金/三重の取り立て/あいまいな基準/外銀が標的に

第8章 冤罪の恐怖
 あるソマリア移民/証拠がなくとも制裁/「祝福」の代償/疑わしきは罰する/一三年の法廷闘争/名門の上院議員も/慈善団体とテロ/ディリスキング/日本のメガバンクも/送金業務が急減/汝の客の客を知れ/朝令暮改/一般市民が犠牲に

第9章 米法はなぜ外国を縛るのか
 「国外適用ではない」/国外適用の法理/かつては各国政府が抗議/骨抜きの対抗措置/司法に介入せず/「国際正義」の確立/米国と国際法/米国至上主義/司法の強さ/広がる国外適用



第4部 金融制裁乱用のトランプ政権

第10章 制裁に効果はあるのか
 仕事の半分は制裁/体制転覆を狙う?/貿易不柊衡か覇権争いか/金融制裁は「効く」/「成功」は三六%/短期的な目標は達成/制裁だけでは目的は達成できない/なぜ制裁は効かないのか/被制裁国を支援する国々/米国内に共通する危機感

第11章 基軸通貨ドルの行方
 通貨主権/ポンドからドルへ/基軸通貨の条件/通貨の番人/あからさまな挑戦/プーチンの執念/INSTEXとCIPS/英中銀総裁の提言/危機感を語る実務家たち/「法外な特権」失う日



あとがき――覇権の行方

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

skunk_c

55
現代のアメリカの制裁外交が、国際決済に用いられる基軸通貨がドルであることを利用し、国内企業(特に金融機関)を縛り、外国企業へ排除の脅しをかけて、国外の企業に影響を与える仕組みがよく分かった。同時に、トランプ政権の行き当たりばったりの目先の駆け引き(ディール)にとらわれ、長期的なヴィジョンのない制裁が、かえってアメリカの制裁力、ひいては基軸通貨ドルの力を落とすという指摘には納得。出口のない制裁は、それに従うより他の手段(国際金融なら決済手段)を生み出し、それが結果的にドルの影響力を引き下げるというのだ。2021/01/31

moto

25
昨今のウクライナ危機で、制裁について取り上げられる機会が多いため、手に取った。近年のアメリカ外交における制裁について、分かりやすく解説してある。特に、基軸通貨ドルの強さを活かした金融制裁の威力が詳しく書いてある。事例を交えて解説しているので、ニュースと関連付けながら理解できる。ポスト冷戦期のアメリカ外交の復習にもなると思えるくらい、アメリカ外交における制裁が占めるウェイトが大きいのだと感じた(第二部)。(1/2)2022/02/14

coolflat

19
今の米国の経済制裁の中心は、貿易禁輸(モノの遮断)ではなく、敵対する国や組織を締め上げるために基軸通貨ドルと世界経済の動脈である米国の金融システムをフルに使う金融制裁にある。なぜならモノの遮断はいくらでも抜け穴を見つけられ効果が薄く、モノはどこでも生産でき、貿易できるからだ。だがドルを使わせない金融制裁は、米国が独占的にドルの使用に睨みを利かせているから、抜け穴封じができる。その分効果が上がる。しかも米国の金融制裁に違反して、ならず者国家・組織に金融サービスを提供した銀行には超巨額の制裁金を支払わせる。2021/01/17

紙狸

12
2020年2月刊行。著者は共同通信テヘラン特派員、ワシントン支局長を務めたベテランジャーナリスト。ドルは世界の基軸通貨だ。世界における米国の影響力を支えている柱の一つは、国際金融システムを支配していることだ。この本はこのアメリカ特有のパワーを、「経済制裁」という視角から解明している。ドルの基軸通貨としての地位を、頻繁に金融制裁に利用することは、ドルの覇権の弱体化を早めるのではないか、という問題提起をする。個人的に関心のある対北朝鮮制裁の部分を精読した。北朝鮮の核問題の解決の決め手にはならなかった。2020/08/17

nagoyan

11
優。現代アメリカの経済制裁は、かつての貿易制裁(戦略物資の禁輸等)ではなく、国際金融市場からの追放という金融制裁である。アメリカがこの制裁手法を濫用するにいたった歴史と、金融制裁の実態を鋭く描く。米国内法で国外効果のある、というか、それをねらった制裁手法の合法性を問いつつ、基軸通貨国の特権的な地位を利用した一方的な制裁に対して、ドル離れが進む危険も視野に入れる。それにしても、巨額罰金が利権化している様を描いた第7章、冤罪を介さない様を描いた第8章には驚愕した。2020/04/30

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