内容説明
【ベストセラーノンフィクションの文庫化】文庫化に際して、渡鹿野島を凋落に導いた重要人物「Y藤」の消息を追記。渡鹿野島の歴史のすべてが明らかになる!
“売春島”。三重県志摩市東部の入り組んだ的矢湾に浮かぶ、人口わずか200人ほどの離島、周囲約7キロの小さな渡鹿野島を、人はそう呼ぶ。島内のあちこちに置屋が立ち並び、島民全ての生活が売春で成り立っているとされる、現代ニッポンの桃源郷だ。
この島にはまことしやかに囁かれるさまざまな噂がある。
「警察や取材者を遠ざけるため客は、みな監視されている」「写真を取ることも許されない」「島から泳いで逃げようとした売春婦がいる」「内偵調査に訪れた警察官が、懐柔されて置屋のマスターになった」「売春の実態を調べていた女性ライターが失踪した」……
しかし、時代の流れに取り残されたこの島は現在疲弊し、凋落の一途を辿っている。
本書ではルポライターの著者が、島の歴史から売春産業の成り立ち、隆盛、そして衰退までを執念の取材によって解き明かしていく。伝説の売春島はどのようにして生まれ、どのような歴史を歩んできたのか?
人身売買ブローカー、置屋経営者、売春婦、行政関係者などの当事者から伝説の真実が明かされる!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
H!deking
79
「売春島」と呼ばれた渡鹿野島の繁栄から衰退までのルポですね。ずっと気になったけどやっと読めました。読み物としては面白かったけど、考えると複雑ですね。なんか色々と衰退の要因書いてはあったけど結局のところ時代の移り変わりが大きいのかな。性産業もどんどん多様化してるからわざわざ島に行ってまで、ってなりますよね。自分に置き換えても、若い頃、先輩とかお客さんとかに誘われてスーパーコンパニオン宴会みたいの何度か行ったことあるけど、自分が大人になったら若いやつそういうとこ連れていこうとは思わないもんな〜。2024/01/08
ハイランド
66
幸いにもヤクザ屋と縁のない人生を送ってきたが、ドラマや漫画で見知った世界もノンフィクションで読むと、背筋が寒くなるほど怖い。非合法な商売には、非合法な人々と非合法な金が集まり、搾取される人がいる。在る島の栄枯盛衰を丹念に描いている。何処にでもある風待ち港がヤクザの金と四国から渡ってきた女達によって売春産業で潤った島が、一人のコンサルタントと伊勢志摩サミットによって、観る影もない程衰退していく。踊る人、踊らされる人、様々な人生が交錯する。余談だがゴールデンゴールドという漫画がどうしても想起される。2020/08/30
Shoji
60
私が会社勤めを始めたのは1986年。当時、テレビでは「24時間働けますか」と繰り返し、オフィスや新幹線、飛行機の自席でタバコを普通に吸ってた。慰安旅行なる催しがあって「渡鹿野島」や「山代温泉」が毎度候補に。そして話題はコンパニオンは何人か?、など大声ではしゃいでいた。今なら一発アウト、即退場ですね。そんな渡鹿野島の凋落が綴られています。ところで、渡鹿野島と言えば伊勢、伊勢といえば当時、国際秘宝館なるエロのテーマパークもあって観光バスが乗り付けてたな。知らぬ間に消えて跡形もないが。こちらも凋落ですな。2020/06/20
kei302
57
最初に登場する取材相手のX氏の話にウンザリで、ここは流し読み。立ち位置が行政寄りの三橋さんの話は興味深かった。江戸時代から現在までの島の歴史、港のある集落の特徴と渡鹿野の共通点や成り立ちが分かりやすい。新聞記事は何となく覚えている。漁業関係者の思惑で橋が架けられなかったことも触れていて、煽りっぽいタイトルと興味本位の取材スタイルと文章は何だかなぁ…だけど、読めてよかった。 KindleUnlimited2021/11/18
ichi-papa
52
以前からこの島の噂は耳にしていました。今回、そのルポルタージュを読んでみたのですが、社会の裏を知って、どんどん悲しくなっていってしまいました。生きていくことはきれいごとではないと知ってはいるつもりなのですが、・・・やぱりきれいなものだけを見て生きていきたいなあと思いました。何とも悲しいです。2020/02/13