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内容説明
朝鮮近代文学の祖と言われるも、解放後「親日」と糾弾され消息不明となった李光洙。日本統治下の人々と社会をつぶさに描き、旧世界への危機感を喚起した傑作、ついに文庫化!〔ムジョン〕は「無情」の韓国語読み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
93
韓国の夏目漱石、と言われる人の代表作。 作風は似てない。漱石より明るい、というと語弊があるが、あの、ネチネチ暗く悩む感じはない。 1910年(日本併合時代)のソウル、知識人が幼馴染の美貌の妓生と裕福で知的な女性との間で揺れる話。 それぞれの登場人物が当時の韓国の擬人化らしく、極端。下宿の老婆だけリアリティがある。 女は強いね、という読後感。 作者の実感でもあったのでは?2021/04/12
Shun
30
本作は韓国文学初の近代長編小説と銘打ち、作者のイー・グァンス氏は親日として糾弾されるなど著作の評価とは別に韓国内での風当たりは強かった模様。近年の韓国文学は日本だけでなく世界でも知名度が上がっており今後は邦訳ものが増えればもっと触れられる機会が増えそうです。本作の物語は、日本統治下の韓国社会で近代的教育に情熱を捧げる真面目な青年と、境遇の異なる二人の女性を中心に描かれる恋愛文学または啓蒙的意味合いが込められた物語でもあります。当時の世相や古びた価値観と近代化の間で揺れ動く人々の思想は一読の価値ありでした。2021/09/18
崩紫サロメ
20
朝鮮近代文学の祖・李光洙の代表作。「文明化」と「旧社会」の中で葛藤する男女を描いた啓蒙小説、ビルドゥングスロマンであるが、とにかく展開が面白い。川に身を投げたら必ず助かる、世間は滅茶苦茶狭い、という韓国ドラマ的な面白さというか(笑)痛快な展開の中で、それぞれの自己撞着や差別意識など、垣間見える感情が鋭い。主人公の友人友善の女性の貞節に対する認識の矛盾(作者が指摘している)など。ラストは、これが植民地支配ということなのだろうか、と衝撃として受け止めた。2021/05/24
まこ
10
この頃の朝鮮半島は西洋のアレコレが沢山入ってきたが、付け焼き刃だし、知識がない人を無意識のうちに見下している。ヒョンシクも誰かに見下されているんじゃ。西洋が入ってくるのは良いことなのかと思わせてからビョンウクの登場で女性の西洋での生き方や朝鮮半島の古い学問も学ぶバランスの良さが入ってきて理想の形を示している。ヒョンシクの恋愛に対してどっちつかず、英采もソニョンにも失礼な態度が最後まではっきりせずに終わったのが。ラストは打ち切りエンドみたいで消化不良2022/03/20
jamko
8
〈韓国文学初の近代長編小説にしてハングルで書かれた初めての知識人小説〉という説明が気になって読んでみた。通俗小説っぽいなと思いながら読み出したのだけど終盤めちゃめちゃ盛り上げてきて今読んでも面白い。でも朝鮮が日本統治下にある時代に書かれたことは頭に入れて読むべきだよね。不自然なほどに日本の憲兵や日本語の強制など非植民地であることが隠されている。ラストは啓蒙小説の色合いが濃いが、背景を考えれば時代の変化を願うしかない悲痛さも感じてしまう。2021/06/30