内容説明
沖縄戦での許嫁の死、生家の破産、離婚……。病弱な女ひとりの境涯を支えるため、細々とラジオに寄稿し始めて50年、一貫して無名の庶民の心性に寄り添い、魂の深部から響いてくる真実の言葉を刻み続ける。自然の風景に、仏像の佇まいに、平凡な暮らしの道具に、そして何より人の心の中に美を求める、珠玉の88篇が、厳しくもしなやかな半生の美への巡礼の足跡を指し示す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
3
身の回りの美についての随筆集。やや自己陶酔的な文体が読んでいて引っかかりますが、それでも女性らしい感性の細やかさは光ります。「夢見ごはん」などはとくに佳品。2016/07/14
和菓子男子
3
美という温もりが五感を夢心地にさせる随筆集。か細くて儚い、簡素で静か、されど芯があって気高い日本の美を改めて知る。「人間にとって、なによりうつくしいものは人間でなくてはならないだろう。」作者の言葉、一つ一つがまた美しい。2015/01/02
belier
2
この本に収められた随筆は、1963年から1967年までに書かれた原稿ということだ。題に違わぬ端正な文章が並んでいる。著者は古いものを大切にする人のためか、当時はやっていた言葉はあまり使わないようにしていたようだ。そのためだと思うが、今では気恥ずかしくなるような死語が少ない。もちろん古風な言葉はたくさん使われているが、古典を読むようにかえって素直に受け入れられた。2021/10/29