内容説明
小石川後楽園、六義園、浜離宮等、大名家が誇った名園はどのように造られ、そこではどのような社交や饗宴が催されていたのだろうか。自然の地形や植生の利用、潮入りの池のような大泉水、回遊様式など、日本庭園の魅力的な特徴を備えた大名庭園。そこを舞台に繰り広げられた茶事から趣向をこらした酒宴など多様な遊興と社交に、本書は注目する。大名庭園は京の公家文化と武家社会をつなぎ、当時の芸能、芸術全体を取り込んで成立したことが明らかになる。西洋の宮殿庭園とも機能を比較する他に類をみない文化史。
目次
序章 饗宴の園
第一章 茶の儀礼を越えて──大名庭園の成立
1 大名屋敷とその庭園
2 御成と庭園
3 大名庭園の成立
4 桂離宮の造営
第二章 山海の佳景──江戸の大名庭園
1 和漢の教養──小石川後楽園
2 六義園──和歌の庭
3 育徳園──外様大名の庭
第三章 政事と遊事の秘園
1 「天下の三名園」はどうきまったか
2 金沢兼六園
3 岡山後楽園と水戸偕楽園
4 城下町の庭園群
第四章 饗宴の庭──大名たちの社交
1 社交の場としての大名庭園
2 ヴェルサイユの庭園
3 社交と開放
第五章 庭園は江戸にあり
1 庭園史の常識
2 大名庭園の特徴
3 浜離宮と芝離宮
4 もう一つの潮入りの庭
終章 大名庭園衰退史
参考文献
あとがき
解説 尼﨑博正
索引
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
T.Matsumoto
4
京都中心の日本庭園史に、あえて大名庭園をテーマに選んだ意欲作。庭園自体の美学的な解釈ではなく、使われ方に着目しているのがポイント。日本各地の有名庭園が大名庭園であったこと、大名や将軍、主従の「饗宴と遊びの場」であったこと、体制転換と共に数多くが失われたことなど、様々なストーリーがある一方で、庭園の構成や、作庭思想への言及は少ない。都市との結びつきや、大名庭園から公園に転換していくドラマ、考古学的考察など、伸び代のあるテーマですが難しいのも分かります。やっぱり庭園は、京都がいいかな。2020/09/29
tokumei17794691
3
桂昌院、光圀、柳沢吉保、松平定信など、よく知られた人物に関係しているので、わりと読みやすかった。大名庭園が「見る」だけなく、スポーツや茶会、酒宴などで「遊ぶ」場であったとのこと。それなら、冒頭の「園遊会の楽しみ」の項で、招待客の想定会話を、「現代的催し」と早々にやめてしまったのがもったいない。「将軍の御成り」「家臣の慰労」「一般開放」など、いくつかのパターンに分けて、大名庭園で行われた社交を紙上再現しても良かったのでは? カラー図版が巻頭4ページの庭園画しかなく、図版自体も少なかったのは残念。2025/03/27
Tsuki-Natsu
0
非常に良い2021/05/06
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