内容説明
名探偵・阿久津透。数々の事件を解決してきた彼は、証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したという罪で、本邦初の探偵弾劾裁判にかけられることになった。兄を見殺しにされた彼の助手、火村つかさは、裁判の請求人6名に名を連ねたが、その中には思わぬ人物も入っていて――! 新人発掘プロジェクトから現れた鬼才、審査員を唸らせた必読のデビュー作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オーウェン
66
著者のデビュー作だが、これだけの長編をよく纏められたと関心するミステリ。 裁判までには阿久津の過去の事件や、その推理に対して恨みを持つ6人の請求人が集まっていき、いよいよ裁判の開廷という流れ。 阿久津のキャラもそうだし、かなり濃いめの人物が多いが、特に裁判官の榊遊星の場を混乱させる役割は面白く、ゲームの「逆転裁判」を思い起こす。 二転三転どころではないし、転生という特殊な状況下で犯人や被害者などが別という観点は新鮮な余韻。 他作品も読みたくなる出来。2022/07/17
うまる
38
探偵が地位を認められている世界における探偵の弾劾裁判。紅蓮館と同じく、そこそこの登場人物数なのに、それぞれが合理的な行動をする事で複雑化してくる展開が良くできています。デビュー作からこんなに緻密な構成とは驚きです。とにかくミステリ愛全開で、こなれた作家が遊びや実験としてやる事をデビュー作でやっちゃったよという感じもあります。あそこで斜め屋敷も出てくるとは! 純粋に事件の謎と解明だけを読みたい人には合わないかもしれないけど、ミステリ論・探偵論も好きな人には最高の作家さんです。小説以外の本も書いて欲しいなぁ。2021/02/25
hnzwd
34
探偵が公務員として認められた世界を舞台として、悪徳?探偵の弾劾裁判を通して暴かれていく意外な真実。。何もかもが絡み合って着地した真実は凄い。各章のタイトルが名作ミステリから取られている中で、『再会、そして逆転』!!逆転裁判だーー!散りばめられたセリフなんかもゲームとしても大好きな逆転裁判オマージュを随所に感じられたし大満足でした。2020/07/02
かめりあうさぎ
30
著者デビュー作。特殊な世界観の上にとんでも設定を持ち込んだ上でのミステリで途中ちょっと疲れてしまいました。中盤を乗り越えて後半は面白さが加速したので読後感は良かったです。ある探偵が過去に解決した事件は、本当に正当な捜査方法で真実に辿り着いたのか…探偵に恨みを持つ者たちが弾劾裁判に打って出る。果たして真相は…。謎解きレベルは結構高めでした。2020/10/20
おうつき
29
著者のデビュー作。証拠の捏造や事件の隠蔽を図った疑惑の名探偵が弾劾裁判にかけられるという特殊設定ミステリー。「紅蓮館の殺人」同様、探偵の在り方がテーマになっていると思われる。「探偵弾劾裁判」「転生」の二つの要素が核となっているが、途中まではそれぞれ別の作品で扱ってほしかったなと思っていた。しかし、後半の怒涛の解決編で全てがかっちりとはまり夢中になってしまった。石持さん、東川さんのアドバイスによる手直しが大きかったのかもしれないが、これだけ複雑なプロットを練り上げた阿津川さんは一体どんな頭をしているのか。2020/07/02