内容説明
天才絵師の素顔と技法に迫った長編小説。
若冲没後百年を経た明治37年、セントルイス万博に〈若冲の間〉というパビリオンが出現する。この時〈Jakuchu〉の名を世界に広めたのは誰だったのか? 京都の図案家・神坂雪佳は、若冲の末裔という芸者から〈若冲の妹〉と呼ばれた美しい女性の話を聞く。
宝暦13(1763)年、京都錦の青物問屋〈枡源〉に、一人の少女がやってきた。主の若冲が飼う鶏や、珍しい鳥、美しい毒草などの世話をするために。美以という名の少女の体からは不思議な芳香が漂っていた。その匂いに、若冲はかつての異国の女の面影を重ね合わせながらも、美以を自分の弟に嫁として与えてしまう。若冲を慕う美以は、以後〈若冲の妹〉として思いを秘めたまま生きていくことになる。
『動植綵絵』の完成間際に、錦市場を揺るがす事件が起こり、弟が謎の死を遂げる。彼は本当は若冲の何だったのだろうか。さらに天明の大火による被災……だが、若冲が本来の絵師として蘇生するのはそれからだ。そして、いつも傍らには〈妹〉の姿があった。
心の中の〈奇〉を描かずにはいられなかった絵師、若冲。時空を超え魅了し続けるその素顔と秘密に、江戸と明治の二つの時代軸で迫った長編小説。
※この作品は過去に単行本版として配信した『遊戯神通 伊藤若冲』の文庫版です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
貧家ピー
7
明治37年 アメリカ・セントルイス万博 日本館の〈若冲の間〉から物語が始まる。史実を基に江戸と明治を行き来し、 若冲の素顔に迫ろうとする一冊。 錦市場差し止め問題の最中に描き、天明の大火でも生き残った「動植綵絵」「釈迦三尊像」に、作品に乗せられている若冲の思いを突き付けられた。 「遊戯神通」遊び戯れるかの如く人々の救済を楽しむこと。 2020/08/18
たまりん
2
錦市場のことが少し知れますし、伊藤若冲の絵を見に行きたくなりました。特に砂糖鳥。砂糖鳥って本当にいるのか?とても気になりました。2023/03/30
涼耶
0
なんだか淡々と話が進んだような、なんとなく若冲の人生を一枚のフィルターを通してみたような歯痒い読後感だった。若冲の何にフォーカスを当てたかったのか見えてこないのは何故かわからなかったが、こんなふうに暮らしてました。ふむそれで?という感じか。また違う時に読むと違うのかもしれないが…2024/02/02
yukioninaite
0
女性目線の若冲、良かったです。2022/04/28