内容説明
『源氏物語』の舞台ともなり、千年以上も続いた貴族の世界。生活・政治のあり方、太政大臣・女院・里内裏の変遷など、その実態を解き明かす。1986年刊の名著、待望の復刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
40
平安貴族に関する歴史論文集。NHK大河ドラマ『光る君へ』の予習になる。上皇の権威は薬子の変後に天皇中心に改まり、院政は天皇の父親としての権威で行ったと見られることが多い。本書もそれを否定しないが、薬子の変後も上皇の権威はあったとする。 「公的な場における私的な関係の進出という一般的風潮にのって、「父子の儀」を背景とする上皇の発言力が次第に強められたことにもよるが、一面では太政天皇固有の政治的地位が底流となって承けつがれていたことも見逃してはならない」(96頁) 2024/01/20
ゆずきゃらめる*平安時代とお花♪
14
平安時代・平安貴族を三部にまとめたもの。この手のものはていくつ読んでも興味深くて途中一人でつぶやいて内容につっこんだりしてしまいます。けして全てが分かって読んでるんじゃなくて勘です。貴族の一日、太政大臣の多様、女院の数・・天皇の名字など面白く読ましていただきました。 ひとつ言うと漢字に読みかた書いて欲しいですね。 2020/09/28
まこ
11
今まで平安貴族は生活や文化について色々調べてきたけど、政治の面はあまりなかったのを実感。冒頭の源氏物語と絡んだ解説が作中と実際の比較となって次の章以降に綺麗に繋がってる2022/02/03
nagoyan
11
優。なかなかに難物だった。二度三度とよむと世界が広がるような気もする。本書を読むと平安貴族は、今の政治家などよりよほど勤勉で謙虚だったのだなと変なところで感心。さて、「里内裏」の通説を否定。また、同様に、摂関政所や院庁は、あくまで家政機関であって、国政機関ではない。摂政、院は、太政官制を前提として、それを作動させる仕組みであった。その他、太政大臣、女院、院宮分国と知行国制について主張がある。2020/06/06
chang_ume
9
「里内裏沿革考」(初出1981年)のみ。収録の「歴代皇居略年表」だけでも相当の情報量です。天皇・院の個性が、住居の位置情報から浮かび上がる。里内裏の成立と定着について画期を探ると、里内裏(東三条殿)が実質的に成立した一条、里内裏への居住を繰り返した後冷泉、内裏が焼けずとも里内裏に定住した白河、内裏不使用が続いた鳥羽、内裏の復古がうかがえる二条、閑院に固定した高倉、内裏と閑院で機能分化した後鳥羽、内裏が廃絶した後堀河、閑院が廃絶した後深草、冷泉富小路殿に定着した花園となるだろうか。展開を段階的に理解できた。2020/06/13