ちくま新書<br> 現場力 ──強い日本企業の秘密

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ちくま新書
現場力 ──強い日本企業の秘密

  • ISBN:9784480073129

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内容説明

IoT、AI、インダストリー4・0――。官主導で次々に仕掛けられる潮流に飲み込まれた日本の産業界は、重要なものを見落としている。それは、日本企業の技術開発が現場で行われてきたものであり、リーダーが計画できるものではないということだ。では、真に競争力のある企業が持っている「現場力」とはなんなのか。ドイツやタイ、そして日本のものづくりの現場を歩き、従来の完成品メーカー/下請けの関係を超えて地方発の新たな取引関係を打ち立てつつある、日本企業の強さの秘密に迫る。

目次

まえがき
第一章 経営の品質を決めるものは何か
1 企業の品質
企業の価値はどこにあるか
私たちが見落としているもの
競争力とは何か──あるパン屋の例
付加価値をつくりだす能力、ビジネスとして継続する能力
企業の品質を決めるもの
2 「深層の競争力」とは
「中小企業」という既成概念
健全な中小企業
「固有の技術・サービス」とは
第二章 すべてのものはインターネットにつながらない──ものづくりのプラットフォーマー・ドイツ・日本
1 GAFAがアメリカで生まれた理由
国や企業はそれぞれの「物語」をもっている
「文化」と「文明」
日米のものづくりのちがい
アメリカにはアメリカの、日本には日本の「歴史経路」がある
2 インターネットにつながらないものとコト
無視される情報発信者の「主観」と「生産の現場」
日本の工作機械産業──個別企業ごとの「IoT」
3 ものづくりのプラットフォーマー──井上特殊鋼
二〇〇〇年代に入ってからの変化
ハブ&スポークの仕組み
問われる受注のマッチング
技術力と営業力はしばしば一致しない
取引先が三五〇〇社の福田刃物工業
「固有な情報」は「つながらない」
「固有の情報」は「固有の努力」によって蓄積される
4 「インダストリー4・0」の 
壮大なミスリード
「ハイテク戦略2020」の理想と現実
5 ドイツのものづくり
ミッテルシュタントの特徴
ミッテルシュタントの根幹をなすマイスター制度
変化するマイスター制度
自社にとっての「ベスト・プラクティス」とは何か
第三章 競争優位の分水嶺──日本のものづくりの強みとは
1 現場志向のものづくり思想
日本のものづくりの強みとは
旺盛な起業家精神
「職人」から「職工」への変容
「定着する職人」への需要の高まり
2 技術立国への歩み
自動車産業と鉄道産業の変遷
「高品質で大量生産」という課題
「よいものづくり」という思想の原点
3 よいものをつくれば売れるのか
部品メーカーのイメージ
考察する対象企業
グローバル化の中の部品メーカーの実態
部品メーカーが直面する課題
4 経営を左右する生産設備の内製力
普遍性のある戦略はあるか
生産設備内製力と経営の安定
自動車部品メーカーT社の例
T社のコア技術
どん底から復活まで
技術戦略の要諦
トヨタ生産システムと類似のロジック
見えてきた部品メーカーの強みの本質
大切なのは日常の心構えと組織能力の高さ
第四章 タイと日本──技術観とものづくり思想の相違
1 日本とタイのメーカーを比較する
タイのO社──受注率の低さが課題
日本のB社──収益性の上がらなさが課題
2 RBV理論に基づく考察
B社とO社の経営資源
経済価値──生産設備内製力と製造技術
希少性──経済価値を希少化させる一定時間軸
模倣困難性──歴史的経路依存性に依拠
①独自の歴史的条件
②因果関係不透明性
③社会的複雑性
組織──技術プッシュ志向な組織体
まとめ
第五章 バーチャル・エンジニアリング世代の台頭──見えてきた差別化創出のカギ
1 新しいものづくり思想
若者世代のものづくり思想
「V・E志向」と「現場現物志向」
技能伝承の停滞
V・E世代の台頭から見えてきた新たなものづくり思想
小関智弘の指摘
相反するものづくり思想
2 差別化を生むカギ
デジタル化の進行とプロセスの個性
部門横断的コミュニケーションの必要性
第六章 競争優位の源泉に迫る
1 不確実性への対応
定量分析だけでは実態を把握できない
二次元(アナログ式)図面こそが差別化を生む
イタリアの事例とデジタル技術
不確実性に対応するために
現場現物が先である
2 能動的思考力
競争力のある企業の共通点
「デザイン・イン」への対応力
生産設備内製力と製造技術だけでこの先逃げ切れるのか?
3 「主体的に考える」ということ
事物はまねやすく、精神はまねにくい
競争優位をもたらすもの
競争力の源泉を再考する
終章 ものづくりの取引関係の再編期
1 人間とAI
異議申し立て
技術は基本的にアナログなもの
職場の日々の問いかけを考える
2 組織能力はどこから生まれるか
「組織能力」とは
「工業」なしに「情報」は成立しない
シンギュラリティはやってこない
あとがき
参考引用文献