内容説明
1815年、大小さまざまな主権国家の集合体・ドイツ連邦が誕生。以降、ドイツは帝国、共和国、ナチス、東西分裂、そして統一へと、複雑な軌道を疾走した。本書は、同時代に誕生した鉄道という近代技術を担った人びとと、その組織からドイツを論じる。統一国家の形成や二度の世界大戦などの激動に、鉄路はいかなる役割を果たしたのか。「富と速度」(ゲーテ)の国民経済を模索した苦闘とともに、「欧州の盟主」の実像を描き出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
59
鉄道の発達を通じて近代ドイツ史を語ろうという試み。序章に「一筆書き」で概要が書かれてはいたのだが、前半は元々領邦として分裂した地域だけに、その試みは必ずしも成功したとはいえない感じ。テーマもあれこれあってかなりとっちらかった印象。だが後半の帝国ドイツになると、国有化、軍事力輸送手段としての役割と限界など、かなり意図した内容が伝わってきて俄然面白くなった。特にホロコーストと鉄道の関係について、「すべての道はアウシュビッツに通じる」と題された路線図は衝撃的。この章の主役をユダヤ系鉄道官僚にしたのも正解と思う。2020/04/18
六点
19
『ドイツの鉄道史』でないことに注意。ゲーテの夢に始まり、ドイツ鉄道網の東西統一に至るまでの鉄道から見たドイツの歴史である。後半になるにつれ、巨大組織となっていくドイツ鉄道の苦難は鉄道そのものでなく政治的なものになる。アウシュビッツがポーランドの鉄道結節点であることを、改めて知り、「あまりに、ドイツ的」と思ってしまった。良しにも悪しにも合理的過ぎるのだ。欧州における鉄道は国内インフラであると同時に、国際ネットワークの一部であるのだ。日本とは全く異なる鉄道のあり方である。それが学べただけでも価値がある。2020/08/11
パトラッシュ
16
経済学者の著書だけにドイツ鉄道企業の誕生と歴史が中心だが、国家官僚制との結び付きや現場技術者の活躍にも広く目配りし、ドイツの統一と経済発展に並行して鉄道建設が拡大する状況を綿密に描き出しているのが面白い。「ドイツ語圏」の複数の国で独自に敷設が進んだため「帝国」形成後も全国レベルの国鉄はつくられず、第一次大戦の敗北後に持ち越されていたとは、その根強い地方主義に驚く。またドイツの鉄道利用の失敗が、両大戦での敗戦に至るとする点には頷かざるを得ない。米英仏ロなども鉄道と国の発展がどう描かれてきたのか知りたくなる。2020/07/21
MUNEKAZ
12
地味な技術史かと思いきや、鉄道を通して「ドイツ」とは何かを問う内容で、かなり大上段な視点に面食らう。各地域が独立した連邦国家である近代ドイツで、各領邦ごとに建設された鉄道会社たち。それは統合に反発する地域主義の象徴であると同時に、相互に乗り入れ繋がる路線がまだ見ぬ統一国家への夢想を刺激する。近代国家と鉄道インフラの切っても切れない依存関係と緊張感が面白い。ナチスからあまり重要視されていなかった鉄道が、戦争の進展とともにアキレス腱となる様子、そしてホロコーストに果たした決定的な役割はその良い例か。2020/03/22
スプリント
10
ドイツのお国事情と関連付けて鉄道の歴史を解説しています。2020/09/23
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