内容説明
もともと日本語は「終りよければすべてよし」の構造で、重心は末尾の動詞にあった。だが次々と登場した名詞群に関心が移り、バランスが崩れた結果、長く培われてきたおもしろさは失われた。それは翻訳文化の影響だといえる。日本語本来の魅力を取り戻すうえで、話し言葉がもつ豊かさこそ重要なカギとなるのではあるまいか――。日常の言語生活にひそんだ盲点の数々を、英語表現と比較しつつ軽やかな筆致で示唆するエッセイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
1.3manen
32
目から鱗が落ちるのは、日本語は黙読はしやすいが、裏をかえせば読んでいるときに耳は遊んでいる。耳が泣いている(37頁)。国語の試験も、あらゆる筆記試験も、声を出して読んではいけません、という注意事項がある。音読の力量を評価する面接試験に代替されるなら、もっといい人材を採れるのだと、人事の人間は思わないのかい? 雑談が楽しいだけでなくて、たいへん重要な成果を生むことがある。必要なムダはあったほうがよいばかりでなく、それによってのみ生ずる文化的価値があることが見落とされてはならない。2020/06/13
ハル牧
7
情緒的な、つまりは非論理的な話をしたり、無駄に見える行動をとることは、この島国の社会に大きな役割を背負っている。そんな社会において使用される日本語に、説明が難解な個性があるのは言うまでもない。周りに流されてか、空気を読んで日々を生きることができる者にとっては、この言語の個性には共感できるところがあるかもしれない。論理的で無駄の少ない行動を志向する者は各々の社会において、しばしば浮いてしまう。我々が目指すべきは、少数派の排斥でも出羽守的発言でもなく、文化と、その根源たる言語の個性を知った上での行動である。2020/04/11
sumi
5
勝俣銓吉郎編「英和活用大辞典」2021/01/25
むむむ
3
短編エッセイの集積版で気楽にページをめくることができる。最も胸を打ったのは、文化の輸入を樹の植え替えに例えた点だ。まず、下準備として植え替える場所には穴を空け、肥料を撒くなど準備が求められる。さらに、樹自体もある程度枝葉を落とすなどしなければ、耐えきれない。加えて言えば、夏のように生命力が盛んな時期には向かず、ひっそりとした状態での移転が必要だ。 また、日本語を学ぶ(教える)にあたって重要なのは枝葉末節の単語レベルではなく、パラグラフ単位やコロケーションなど、全体をつかむことという指摘も納得だ。2020/10/21
8月のあるぱか
2
パラパラと眺めた際は軽い随想集かと思いきや、読み進めると日本語の現況、海外との関係、日本語の国際化などしっかりしたテーマを親しみやすい形で紹介していた。日本語について改めて考えるきっかけになる本。刊行年が古いので背景が少し現代と合わないこともあるが、それを差し引いても良書。気取らない文章が心地よい。 2020/05/11




