内容説明
伝説の漫画家が私生活の苦闘を描いた幻の日記、待望の初文庫化。
昭和50年代、結婚し長男も誕生して一家をかまえた漫画家つげ義春は、寡作ながらも「ねじ式」「紅い花」など評価の高い作品群が次々と文庫化され、人気を博す。生活上の安定こそ得たが、新作の執筆は思うように進まず、将来への不安、育児の苦労、妻の闘病と自身の心身の不調など人生の尽きぬ悩みに向き合う日々を、私小説さながら赤裸々に、真率かつユーモア漂う筆致で描いた日記文学の名篇。解説・松田哲夫。
目次
昭和五十年
昭和五十一年
昭和五十二年
昭和五十三年
昭和五十四年
昭和五十五年
あとがき
解説
年譜
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
71
著者の漫画は「ねじ式」「李さん一家」の前期代表作から、後期の『無用の人』まで愛読しており、本書もその流れで読み始めたのだがこれが極めてきつい。昭和五十年から五十五年まで、五年間の日記。五年間と言っても子供の誕生から入籍、妻の癌発覚から本人の強迫症まで鬱々とした記述が続いていて、読んでいるこちらの気分まで沈み込んでくる。未読だけど著者の『夢日記』や各種旅行記のつもりで読んでいたら…これだしねえ。ファンとしては等身大の著者に触れれて嬉しいものの、こちらまで著者同様に不安感に蝕まれそうになるので危険である。2022/01/03
ころこ
40
他人の日記は読むことで別の生を生きることができる。雰囲気は昭和の小説家による私小説だが、彼らが総じて短命な印象があるのに対して、つげ義春は82歳の現在も生きている。成長が矛盾を覆い隠し、無駄が不可視化されていた社会では、そもそも「よく生きる」ことは強制されない。こんなんで生きてけるんだ。しかし、才能は疑い得ないし、他人とは根本的に違うともいえ、このフレームの外には何がみえるのかが気になる。例えば、彼の息子の立場からは、彼の生はどうみえるのか。妻マキは短命であり、虐げられ彼の犠牲になっている。2020/07/13
gtn
31
慎ましく遠慮がちに他人に迷惑をかけず暮らしているのに、何故こんな目にあうのだろうと独白する著者。妻の病気、子育て、近所づきあい、偏狭な実母と、不安と悩みに苛まれ続ける。その内省が創造に向かい、あの珠玉の作品群が生まれたのだろうが、それが復刊を繰り返し、今まで何となく生活できたことも、苦しみが長引いた原因と言えようか。2020/10/10
kuukazoo
11
読んでてご本人及びご家族のしんどさが辛く途中でやめようかと思ったが結局最後まで読んでしまった。安定した収入と心身の健康の重要さよ。離婚は考えなかったのか。植本一子の日記もこれに似ている。日記を読み終えて巻末の年譜を読み、こんなに心身ともにヤバかったご本人が80歳を超えて長生きしておられることが何より不可思議だがあんなヤバい作品が常に一定の評価を得ているのもすごいっちゃすごい。芸術院会員選出は驚いたがここ数年の翻訳リリースラッシュをみるとむべなるかなと。しかしあれをどうやって訳すのか...気になる。2022/04/14
秋津
10
作者が、私小説や日記を好むのと同じように、私も他人の苦労というか状況を読むのは面白いと感じる。 そして私は、柏と調布に住んだことがある。まさにこの日記の書かれている昭和50年から55年頃、すぐ近くにつげ義春が住んでいたとは…当時はつげ義春を読んだことなかったけど。 色々な意味で面白かった。 夫人の「私の絵日記」再読しよう。2020/05/05




