内容説明
恋愛小説家のいつきは、旧知の元編集者から怪談の収集を依頼される。ノベルアプリ開発のため、彼が紹介する取材相手から怪異体験談を聞き、原稿にまとめるという仕事だ。友人に反対されつつも生活費のために依頼を引き受けたいつきだが、異様な体験の数々を聞き集めるうちに奇妙な夢を見るようになり、身の回りにも変化が……。「呪い」が、システムに則って動き出す。
目次
プロローグ
第一章 御嫁様
第二章 黒い顔
第三章 揺れる
第四章 空き家の話
第五章 憑くもの
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
228
本書は中々に複雑な構造で私は最初中編5つの怪談噺短編集だと思い込んでおりましたが、実は5章立ての連作長編小説だったのですね。私にとっては本作が初読みの作家さんでしたが、各章は単独で読んでも十分に楽しめる達者な力量の方ですね。うーん、ですが連作怪談になるとこういうラストになるのは仕方ないのでしょうか。何となく終盤になるにつれて段々と面白味が減って行く様に思えてラストがもう一工夫あればなとやや惜しい気がしますね。ちなみに著者は最初の名義が深志いつきで本書のヒロイン齋藤いつきと同名なので私小説かと思いましたね。2021/04/17
眠る山猫屋
55
怪談を扱ったアプリの為に“怖い話”を取材していく主人公。次第に怪異に取り込まれていく・・・。セクシャルな描写は流石。連鎖というより収束していく怪異。実話怪談風味であり新鮮味は薄いが、それぞれのエピソードはかなり捻られていて怖い。代々伝わる〈面〉との婚姻、死期が見えてしまう女性の遭遇した因縁、女を引き寄せる色男の邪悪さ。渦巻きのように、主人公の周りに怪談がよせてくる。幽霊屋敷のエピソード、相談してきた甥に何が起きていたのか・・・。最終話はちょっと出来過ぎ感が強いが、続編が読みたくなる作品かも。2022/03/06
あたびー
38
作者の分身と思われる女性作家が、以前関係のあった編集者で現在アプリ開発をしている男から、ホラーゲームの台本のために実話怪談を聞き書きするように頼まれる。おずおずと始めた仕事が波に乗ってきておかしな高揚感をもたらすようになり、周囲からはその仕事から外れろと諭されるも聞く耳を持たない。やがて聞き取った怪談と同様の障りが起きるようになり…アプリを使って大掛かりな呪術を仕掛けるというアイデアは新しいなと思った。2022/08/24
cao-rin
34
【日本の夏は、やっぱり怪談】〈其の一・和編〉設定は柴崎友香さんの「かわうそ堀怪談見習い」とよく似ている。売れない恋愛作家が実話怪談で起死回生を図るというもの。集めた怪談は全て「呪い」に関係しており、やがて自分自身もその「呪い」に取り込まれてゆく…全てフィクションかとも思ったが、巻末の作者の言葉にヒヤリとする。「呪い」も怖いし、代々受け継がれてゆく「憑き物」も怖い。もっとライトな内容をイメージしていたので、私としては楽しく読めた。よくよく見れば、表紙が結構コワイ…2020/08/07
のりすけ
31
崖っぷち作家が「背に腹は代えられねぇ」と怪談アプリの仕事を引き受けた。話を聞いてまとめるだけっしょ?が、しかし、話に組み込まれていた呪いが作動して行って…。私には面白かった。映像化すればかなり怖くなるんじゃ。首つりした人の口が顎まで落ちるとか指さしたところにいるとか面が肉面になるとか。ただしラストにかけての流れには、もうひと恐怖あったほうが好ましいかな。2021/12/23