内容説明
インターネット上のビジネスに欠かせないP2P(ピア・ツー・ピア)技術。その可能性を開拓した「Winny」の開発者・金子勇は、2004年、「著作権法違反幇助」の疑いで逮捕・起訴され、無罪判決が確定するまでに7年半もの年月がかかりました。
本書は、「Winny事件」弁護団の事務局長を務めた壇俊光氏が自身のブログを元に小説としてまとめたものです。日本のインターネット技術の発展に負の影響を残したと言われる裁判の経緯を追いながら、壇弁護士が見た金子氏の人物像、Winnyの核心を語ります。
推薦文は、2ちゃんねる開設者・ひろゆき氏から寄せられました。
目次
プロローグ
第1章 捜査弁護
第2章 起訴から公判まで
第3章 1審弁護―前哨戦
第4章 1審弁護―警察証人尋問
第5章 1審弁護―技術立証
第6章 1審弁護―被告人質問
第7章 地裁判決
第8章 控訴審
第9章 高裁判決
第10章 最高裁決定
エピローグ
付録 Winnyをより深く知るための基礎知識
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Willie the Wildcat
65
創生期故の混迷と、法治国家としての威信を懸けたせめぎ合い。但し、技術の観点が噛み合わないもどかしさが、改めて浮き彫りになる。著者と被告の掛け合いも本著の見どころの1つで、”カプセルマン”、掲載写真を見て思わず笑った。思わずググって再確認。それにしても、この恵まれた才能が短命に終わったことは、元SEの端くれとしてもかえすがえすも残念。因みに、「まにまに」の意味が分からずググった。日本語は、本当に奥が深い。2023/08/05
Apple
60
本書では、壇俊光弁護士から見た金子勇さんの人物像が垣間見られます。すごい才能がありつつ、純粋で強い好奇心の持ち主なのだと感じました。大変な裁判であったものと思われますが、金子さんのキャラクターから緊張の糸が緩む場面もあり、活き活きと当時のやりとりが感じられました。Winnyの功罪が色々とあるのでしょうが、早すぎた登場によって適切な認識がなされず、お巡りさん側が空回ってしまった部分もあるのかなと思いました。2023/04/16
33 kouch
49
訴訟の当事者主義は講学上のものなのだろうか…。 少し幻滅したが正義と社会のために信念を貫く弁護士の姿には感動した。無罪は勝ち取れた。しかし…あっさり自供してたほうが金子氏も自由が長く、日本のITも進んだのではないか、という著者の回想はなんとも皮肉。専門性、公平性、迅速性といった司法の課題も浮き彫りなる。随所にITや法律の専門用語も出てくるが、ポップに顔文字が出てきたり、裁判の様子も情緒的に描かれているので読みやすい。2023/05/12
山口透析鉄
31
kindle unlimitedで読了。分かりやすく、すぐ読めました。 事件当時は吸収合併された先の某大手損保の業務に忙殺されていて、情報システム部門にいても事件まで興味を持つ余裕もなく、WINNY自体も使ったことはありません。 弁護された方の書かれた本なので当然、捜査当局が悪者です。でも実際、日本の司法の現場を見聞すると、著者が誇張していないことなど分かりますので……こういう方の能力も活かせなかったニッポンムラ、傾くのも当然だったのでしょう。 もっと多くの人にも読んで欲しいくらいです。(以下コメ欄)2023/10/28
ちくわ
29
このドキュメンタリーからは、インターネット、プログラム、ファイル共有、著作権、マスコミ、警察、検察、裁判所、民事裁判など、我々が見えているモノの裏側に『善』も『悪』も玉石混淆している事実を学んだように思う。他にも、天才は変人が多いのかな?と思った(笑)。さらに金子氏が43歳の若さで亡くなっていたのが衝撃であった。天才のご冥福をお祈りしたい。 余談だが、読了時に二宮尊徳の『道徳なき経済は犯罪、経済なき道徳は寝言』という言葉が頭に浮かんだ・・・相反する価値でも、高次にバランスを取ることって大事だよね。2023/11/17