内容説明
インターネット上のビジネスに欠かせないP2P(ピア・ツー・ピア)技術。その可能性を開拓した「Winny」の開発者・金子勇は、2004年、「著作権法違反幇助」の疑いで逮捕・起訴され、無罪判決が確定するまでに7年半もの年月がかかりました。
本書は、「Winny事件」弁護団の事務局長を務めた壇俊光氏が自身のブログを元に小説としてまとめたものです。日本のインターネット技術の発展に負の影響を残したと言われる裁判の経緯を追いながら、壇弁護士が見た金子氏の人物像、Winnyの核心を語ります。
推薦文は、2ちゃんねる開設者・ひろゆき氏から寄せられました。
目次
プロローグ
第1章 捜査弁護
第2章 起訴から公判まで
第3章 1審弁護―前哨戦
第4章 1審弁護―警察証人尋問
第5章 1審弁護―技術立証
第6章 1審弁護―被告人質問
第7章 地裁判決
第8章 控訴審
第9章 高裁判決
第10章 最高裁決定
エピローグ
付録 Winnyをより深く知るための基礎知識
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すしな
17
048-22.物語として面白かったです。日本の権力とITって昔から相性が悪いですよね。司法も行政もそれぞれの役割でベストを尽くすのはいいのですけど、お互いに馴れ合いで行われている司法制度は本当に公正なのかなと思ってしまいました。ただこの件については、著者のオタク味ある弁護士さんの活躍で無罪を勝ち取るわけですが、この裁判によって金子氏にプログラミングをさせなかった時間というのは、国家レベルでの損失と言っても過言ではなく、もうちょっと日本の権力がイノベーションに理解があれば普通に成長できるのではと思いました。2022/05/13
ねお
13
Winnyの開発者・金子勇氏を一審から最高裁まで約7年半弁護した壇俊光弁護士が綴るWinny事件の記録。檀弁護士は金子氏のプログラミングへの愛を理解し、日本の技術者のために彼を無罪に導いた。民事法の世界で違法性の基準が曖昧な技術を刑事法の世界で違法とすることで、日本の技術革新は世界に遅れを取ったと思わざるを得ない。この作品は、警察・検察が、技術刑事訴訟手続が天才プログマーの技術者人生に残された時間をプログラミングに没頭することを困難にし、日本の技術が世界の技術に駆逐されてしまった無念を伝えるものでもある。2020/07/21
masabi
10
【概要】winny事件の弁護士による回顧録。【感想】2000年代の雰囲気を感じる文体で金子勇氏との軽妙なやり取りを通じて、故人の人柄が感じられる。警察の技術への無理解と不公平な司法制度に加えて、天才プログラマーが早逝したことで長く語られる事件になった。もし事件がなければ日本から画期的なサービスが生まれたかもしれない。winny事件や氏の名前を見かけたタイミングで読むことができてよかった。2021/03/25
冬憑……(ふゆつき)
7
Winnyを実際に触った人間ならば、触っていた人間ならば、このプログラムの凄さはよくわかると思う。本の内容はブログを写した物である。が、著者の、金子勇へのリスペクトが痛い程伝わってくる。それくらい、このプログラマーの技術は、当時の日本を変えるかもしれなかったのだ。 今では当たり前にあるサービスの、根幹を日本が握れたかもしれなかった。もしかしたら、日本はもっと裕福になっていたかもしれない。 もし……はいくら云っても仕方ない。日本は違う世界線を歩んでいる。 技術者を大切にする日本であって欲しいと切に願う。2020/10/04
すべから
4
最近だとコインハイブ事件とかもそうだけど、テクノロジーをよくわかっていないのでは?と首を傾げたくなるような罪状で時々逮捕者が出る。Winnyも逮捕時には話題にはなったが、こんな長きに渡る顛末があったことは当然知らなかった。なぜ、こんないい加減な証拠で逮捕しなくてはならなかったのか、そっちサイドの理由が気になる。2020/10/03