内容説明
一歳と四歳の娘と始めたパリでの母子生活。近づく死の影から逃れるための突然の帰国。夫との断絶の中、フェスと仕事に追われる東京での混迷する日々……。生きることの孤独と苦悩を綴った著者初のエッセイ集。<自分を愛することを認めてくれる人はたくさんいるけれど、自分を愛さないことも認めてくれる人は稀有で、金原ひとみさんはその一人だと思う。西加奈子><壊れるように成熟してゆく魂。パリ―東京の憂鬱を潜り抜け、言葉は、痛みと優しさとの間を行き交いつつ、気怠く、力強い。比類なく魅力的な作品。平野啓一郎>
目次
パリ
01 ミルフィーユ
02 カニキュル
03 スプリッツ
04 ミスティフィカシオン
05 シエル
06 エグイユ
07 メルシー
08 ジュゾランピック
09 アボン
10 プリエル
11 ガストロ
12 ピュトゥ
東京
01 カモネギ
02 おにぎり(鮭)
03 玉ねぎ
04 フェス
05 ラーメン
06 牡蠣
07 修行
08 未来の自分
09 グループライン
10 母
11 アマゾン
12 フランス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
245
金原 ひとみは、新作中心に読んでいる作家です。著者のエッセイは、初読ですが、エッセイというよりも私小説短編集のような雰囲気です。著者は、結婚して二人子供が生まれて丸くなったイメージがあったのですが、やっぱり尖っていました。テロのパリの憂鬱から、日本に舞台を移して、今後どう変わっていくのでしょうか? https://hb.homesha.jp/paristokyo/01_20181101/2020/08/08
ちゃちゃ
122
「私は生きるために、伝わると信じて書くしかない」ずっと生きづらさを抱えてきた人なのだろう。彼女にとって生きることは、誰かを傷つけ自分も傷つき、辛くて寂しくて、激しい自己嫌悪と罪悪感に苛まれる日々だったという。かけがえのない家族を得てもその思いは常に彼女を苦しめる。だからこそ、書くことは世界を信じることに繋がるのかもしれない。生きる自分と書く自分、その乖離が自分という不確かな存在を、辛うじてこの世に繫ぎとめる手段なのだ。6年間のパリ暮らしを経て帰国した日々を綴る、金原ひとみという作家の魅力に迫れるエッセイ。2020/10/10
sayuri
111
小説『アタラクシア』で惹かれ、著者初となるエッセイを手に取る。エッセイでありながら小説の様でもあり、自分と掛け離れた世界の様に感じながらも、ごく身近に感じる瞬間もある。普段から『気付き』が多い自分にとって金原さんの生き辛さといつも死を身近に感じている事に共鳴する。『生きているだけで、何かに何かの感情を持っただけで、何かに傷つき、何かを傷つけてしまうその世界自体が、もはや私には許容し難い』の言葉通り、リアルであろうがSNS上であろうが理不尽と捏造に塗れた世界は人を苦しめる。心の底からの本気の叫びに共感する。2020/05/29
ゆいまある
83
初のエッセイ。小説と同じテンション。それまで書いていたものもかなり私小説寄りだという自説が立証された。放射能を怖がりオーガニックの野菜を買う癖に大量飲酒(アル中だよねこの人)に喫煙。もしかして頭悪いのかと思ったら「凄い怖がり」。それで今迄の謎が解けた。過敏すぎて人と比べられることを恐れる余り不安を紛らわしてくれる酒音楽恋愛に依存。摂食障害。暴力的なものが大嫌いという癖に自傷癖の開示を繰り返す。これが他人を怯えさせるぐらい暴力的であることから、客観性に乏しいことが伺える。この人の配偶者は凄い人だなと思う。2024/10/27
ホッパー
76
エッセイ。鬱々とした思考が張り付いたパリと東京での生活。メンタルとライフサイクルが澱んでいて重々しい。それでも人生は続くのだなと改めて思わせられる。2021/07/22