内容説明
人類社会を形作るもの、それは「砂」。
その砂はいま、地球から姿を消そうとしている……
私たちの暮らす建物、通勤する道路。携帯電話、シェールオイル。
現代人に不可欠なこれらのものはすべて「砂」からできている、または砂がなければ得られないものだ。
この身近過ぎて普段意識さえしない小さな物質は、実際には世界で最も消費され、必要とされる物質である。
その砂と人間長きにわたる付き合い、とくにこの数百年の砂なくしてはあり得なかった発展―20世紀のコンクリートの発明と、21世紀のデジタル技術―を紐解きながら、いま砂が瀕している危機を見つめる。
体当たりの取材と詳細なデータをもとに圧巻の筆致で描く、瞠目の本格ノンフィクション。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
68
「人類社会を形作るもの、それは「砂」。 その砂はいま、地球から姿を消そうとしている…… 私たちの暮らす建物、通勤する道路。携帯電話、シェールオイル。 現代人に不可欠なこれらのものはすべて「砂」からできている、 または砂がなければ得られないものだ。」 2023/10/07
けんとまん1007
49
石油が戦略的な位置にあることは変わらない。それプラス、21世紀は水がそこに加わるということは、耳にしていた。しかし、この本を読んで、さらに、砂の占める位置がとんでもないことだとわかった。道路、建造物の素材、埋め立て用資材としてだけなく、研磨を筆頭に、その利用される範囲の広さと、今の時代の製造物へのかかわりが半端ない。結果として、汚染・温暖化だけなく、環境破壊にもつながっている。しかも、そこに関わる人の視点は、今さえよければ・自分さえよければ・・のまま。これでな、石油・水・砂の三重苦だ。2021/01/23
ゲオルギオ・ハーン
34
人と砂の壮大な歴史を思わせるタイトルだが、コンクリートの登場が人類や地球環境へ与えた影響を語る一冊。コンクリートについての知識があったので読みやすかった。コンクリートで建てることで耐火性があり、頑丈な建物が建つようになったが、それは街並みの画一化と砂不足をもたらすことになった(骨材として使える砂にも条件があるので)。砂が多く使われるということは砂浜の減少にもつながるという構図。では、再利用や人工で作ればいいかというとそれではコストが上がるという厄介な状況にある。ここで話が止まるのでちょっと消化不良だった。2022/10/28
evifrei
26
コンクリート・アスファルト・ガラス―。これらは現代文明の象徴であると同時に、文明を発展させた必要不可欠な要素であるが、全ては「砂」に由来する。我々は「砂」により発展し現在の生活を営んでいるが、砂の採掘を巡って殺人などの残酷な暴力も日々発生している。日本中を網羅する道路にどれだけの砂が用いられるか考えた事もなく、砂が生み出した文化を当たり前の様に享受していたが、その皺寄せは発展途上国や貧困層に向けられている。本書を読むまで想像すらしなかった無知を反省すると同時に、砂がもたらす恩恵の有限さを改めて思い至った。2020/09/10
アナクマ
25
砂、そこらじゅうにある気がする。そして文字どおり文明を支える「世界で最も重要な固体」。争奪戦になっている。◉9章_やや番外編な感じで「砂漠との闘い」。内モンゴルの緑化をルポ。アジアの森林面積は世界でも突出して増加傾向にあるが、理由は中国。猛烈な植林。しかし著者は成果に疑いの目を向け「緑の長城は…役立っているのか、結論を出すのは難しい」◉専制政治による強制(的な移住)と、金を稼ぐ自由(に基づく緑化企業)。気にとめておきたい。どちらも大事を駆動する原動力ではある。2023/10/02