講談社学術文庫<br> ペルシア人の手紙

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講談社学術文庫
ペルシア人の手紙

  • ISBN:9784065193419

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内容説明

本書は、「三権分立」を説いた『法の精神』(1748年)で知られるフランスの思想家シャルル=ルイ・ド・モンテスキュー(1689-1755年)の名を一躍知らしめた記念碑的作品(1721年)の新訳である。
ボルドー近郊のラ・ブレードの城に生まれたモンテスキューは、ボルドー大学で法律を修め、弁護士になった。1709年にはパリに出て、さまざまな学者や文人と交流しつつ多彩な領域について知見を深めた。本書『ペルシア人の手紙』に見られる東洋についての記述は、この時の成果である。5年後の1714年には急逝した父のあとを継いでボルドー高等法院評定官となったモンテスキューは、その傍らで執筆活動を続け、7年後の1721年に匿名で本書を発表するに至る。
宮廷での政争に疲れたペルシアの貴族ユズベクが友人のリカとともにヨーロッパに出かけてパリに長期滞在する間、故国をはじめとする各地の知人・友人と交わした書簡の集成──このような体裁をとる本書は、たちまちベストセラーになり、発売後1年のうちに10版を重ねるほどの売れ行きを見せた。その魅力は、何よりもまず18世紀前半のヨーロッパ、とりわけフランスの社会を東洋人の目で活写し、風刺したところにある。人々の生活や風俗が具体的に描かれるとともに、時には政治について、時には宗教について語られていく。多岐に及ぶ話題を扱う架空の書簡は、当時の貴重な記録として読むこともできるだろう。
もちろん、フィクションとしての魅力も大きい。ユズベクがあとに残してきたペルシアの宮廷では腐敗・堕落が進み、やがて崩壊の危機に瀕する。ところが、遠く離れたヨーロッパに身を置くユズベクに与えられた手段は手紙しかない。当然のことながら、往信と返信のあいだで生じた出来事についての詳細は語られず、読む者はさまざまな想像をめぐらせながら、宮廷の行く末を見守ることになる。その読書体験は実に刺激的であり、本書がのちの書簡体小説の先駆として高く評価され、読み継がれてきたのも当然のことと言える。
本書は、実力者として知られる研究者が最新の研究を踏まえて取り組んだ、画期的な新訳である。平明な訳文、簡にして要を得た注と解説によって、読む者はたちまち18世紀を生きることができるだろう。今後のスタンダードとなるべく満を持して送り出される渾身の訳業。

[本書の内容]
登場人物
暦について
地名について
関連地図

序 文(1721年)
『ペルシア人の手紙』に関するいくつかの考察(1758年)
ペルシア人の手紙

訳者解説
手紙一覧

目次

登場人物
暦について
地名について
関連地図
序 文(1721年)
『ペルシア人の手紙』に関するいくつかの考察(1758年)
ペルシア人の手紙
訳者解説
手紙一覧

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

刳森伸一

5
事実上の亡命としてパリに渡ったペルシア人貴族2人がやり取りした書簡集という体裁の書簡体小説。ペルシア人にとって異国のフランスでの見聞や哲学的見解、そして、故郷ペルシアに残したハーレムの女性や宦官との会話や命令など内容は多岐に渡る。ハーレムを抱える男とそれに従う女という構図が鼻じらむところもあるが、それが最後にどんでん返しされるので痛快だった。2021/03/13

ミスター

4
これほど繊細なテキストもないと思った。外部の視座から潜在的な社会風俗の機能を明るみに出している点では社会学のテキストともとれるが、たほうで遠く離れた出先から自分のハーレムの状況に不安を覚え、ついには専制領主と化す主人公の姿は不安を覚えるドストエフスキー的な心理小説、サスペンス小説ともいえる。ある種、読み応えとしてはフローベールに近いものがあった、バークやヒュームに影響を与えたテキストとしても必読。2020/10/26

馬咲

2
後年に『法の精神』で示される、共同体の習俗と社会構造を連関させて在るべき政体を探究するという思想の萌芽がこの時すでに見出だせる。しかし本書はそういった単なる後発の主著の踏み台的な価値に止まらず、後年探究が深まっていくが故にそこからこぼれ落ちていった自由な視点と文学形式ならではのユーモアが光る、独自の魅力を有した作品と言える。自国と異なるヨーロッパ習俗への理解が深まった結果両者の板挟みとなり、亡命前より却って苦悩に苛まれるようになったペルシア人ユズベクの姿は、現代人には無縁の様子、とは到底言えないだろう。2022/09/17

風鈴

2
やっと何とか読み終わった。三権分立のモンテスキュー教科書で習ったなと。架空のペルシア貴族ユズベク、リカを主役にヨーロッパに滞在しながら友人知人との手紙のやりとり集。知の探究の為イスラム教徒がキリスト教国で感じる学びは作者の想像興味深い。神の存在、哲学的な命題はかなり理解するのに苦労した。主人不在のハーレムの妻達、彼女達を管理する宦官が気の毒であった。2020/09/13

ヒデアキ

1
モンテスキュー三部作の一つ。 中東社会の専制君主ユズベクと学者のリカがヨーロッパを周遊して学んだことを知人友人宛に手紙で伝えるという体でヨーロッパ・中東文明の違いや権利・自由・平等・政治体制・宗教など当時のタブーに触れて間接的に社会批判をするという内容。モンテスキューの構想力には驚く。三部作の中で圧倒的に面白い。2024/05/23

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